11月18日、東京・汐留で DESIGN IT! Conference というイベントが開催された。同名のUIデザイン総合誌と姉妹関係にあるもので、今回のテーマである「クラウド(とUI)」も同誌第3号とほぼ連動している。1日で計15セッション(午後3×4)が用意されており、半分ほどしか聞くことができなかったが、簡単にご紹介し、コメントしていきたい。
基調講演1「立ち込める暗雲」:クラウド時代のUIは必要か?

基調講演のトップは、Google社の若きUXスペシャリスト、リサーチャーのドナル・マウンテン、デザイナーのブレイデン・コヴィッツ両氏。UX的によく配慮されたプレゼンテーションで、ストレスなく楽しく聞けた。
クラウド環境の課題を「1. いつでも/2. 安全に/3. みんなで」使えることに分類し、1.についてはオフラインでの使用、データ/サービスの可搬性と連携、2.については信頼性標準とプロセスの透明性、アカウント、3.ではコラボレーションに対応したブラウザと複雑化の回避手段といったテーマに整理して分かりやすく解説していた。コヴィッツ氏はGoogle Docsを担当されており、これらの解決を具体的にデザインする立場にあるわけで、タイトルで「暗雲」という言葉を使っているのも理解できる。インパクトは強くないが、参加者とともに考えたい、という善意溢れる人柄が出た、よい講演だった。
システムはUIとともに進化してきた
この30年間、コンピューティングの重心は、ホスト→C/S→Webサーバへと移行してきたかに見える。その先にクラウドが登場し、巨大ベンダーはそこへ向けて投資を集中している。これはWeb時代における“帝国(メインフレーム)の逆襲”なのだろうか。しかし、現実には30年前と同様のホストは残り、依然として多くの人間がそこで働いている。C/Sも同様だ。その延長で考えると、クラウドも過去の地層の上に重なるものであっても置き換わるものでも、覆い尽くすものでもないだろう、ということだ。
ITビジネスの関心に振り回されずに、変化ではなく「進化」に注目してみるとすれば、システムが本来の目的である、多様なユーザーの多様な目的に奉仕する支援環境の発展の歴史ということではないかと思う。C/Sの登場も、ユーザーの知的活動の支援としてだった。だからこそGUIとともに普及したのである。Webサービスは、変化する世界に対して柔軟にサービスを実現するために生まれた。GUIはブラウザとしてシンプルに再整理され、UIはブラウザをターゲットとして、より自由に、動的に実装できるようになった。では「クラウド」は独特のUIを必要とするだろうか?
Googleの二人の話を聞くと、やはり必要なのだ、と思わざるを得ない。Webサービスによって人々は、C/S時代には考えられないほどリッチななUXの実現に向けてUIをデザインする方法を発見した。非技術系のユーザーは、システム(のユーザーにとって重要な側面)を、他と比較しつつ評価できる。Web時代のUI/UXの方法論や手法はほぼ確立されたと思う。しかし、人々はいまや、PCや携帯、スマートフォンなど多様な機器、ローカルのアプリケーションとオンラインのコンテンツやサービスを利用し、異なる環境を行き来しながら生活するようになっている。「クラウド」はそうした時代のニーズによって発展するものだ。しかし、私たちはホストともC/Sとも、オープンやクローズドなWebサービスとも共存していくだろう。クラウド時代のUIとは、だから環境から相対的に独立したものを志向することになるだろう。少なくともGoogleはそうしたUIを追求すべき立場にある。 (11/19、鎌田)
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