ドキュメントへのアプローチ/(1) 動向 大野邦夫

最近、「拡張可能な履歴書」をテーマとしながら、PIM情報やライフログと連携させるシステムを検討しています。その中で、XMLとLispを比較すると、Webでの相性以外はほとんどLispが勝り、かつ学生は、Lispであれば容易に習熟するがXMLはDOMの敷居が高すぎて習熟できない状況なので、XMLというものを、いま一度客観的に見直す時期であろうと思っています。これまでの私の研究を振り返ってみました。(大野邦夫

ドキュメント技術へのアプローチ―大野邦夫氏による研究・開発の軌跡

目次

1. 動向分析:XMLビッグバンとその後(本記事)

2. 開発:マルチメディアドキュメントからXML応用システムへ

3. XMLとプログラミング環境

4. モバイルユビキタス技術

5. PIM(個人情報管理)

6. ネットワークコンシェルジュ

7. ドキュメントと組織・社会・文化

8. 型、オントロジー、知識表現

9. ヒューマン・インタフェース

10. テクニカル・コミュニケーション

1. 動向分析:XMLビッグバンとその後

1997年から2006年までの10年間、GCA(後のIDEalliance)によるSGML/XML関連のカンファレンスに継続的に参加する機会を得たので、その報告を行った。1997年から2000年までは、非常に盛り上がったが、2001年の同時多発テロ以降は参加人員が徐々に減少し、2005年以降は、1996年以前のSGMLカンファレンス程度になった。日本からの参加者も全体の人数に比例して変化したが、2004年以降は、ジャストシステムがxfyの発表の場としたこともあり、同社関係者の参加が目立った。(論文は、国立情報学研究所論文情報ナビゲータCiNiiにリンクしています。)

1-1. 「SGML/XML’97コンファレンス参加報告 : SGML/XMLの技術動向とビジネス展開の状況

1-2. 「XML応用の最近の動向 : 文書・データから, オブジェクト・知識表現まで

1-3. 「メガ競争時代におけるデジタルドキュメントの役割 : XML EUROPE’99の報告

上記の論文は、XMLが従来の様々なIT技術を塗り替えると共にグローバルな共通フォーマットとなり、インターネットによって国境を越えた実時間ビジネスとしてのeビジネスを進展させた経緯を紹介している。今は批判的に見られている新自由主義経済を技術面から推進したキー技術がXMLであったと言える。

しかし個人的には、eビジネスのようなトランザクション的な課題に対して技術的な興味は持てなかった。当時在籍したINSエンジニアリングのビジネスにするにはライバルが余りにも多く、フットワークの良いベンチャー企業には勝てないと考えたのと、個人的な関心はオブジェクト指向や知識表現といった、より複合的な関係を記述する情報技術にあった。

私は1992年から今日に至るまで日本規格協会の標準化の仕事に関わっている。当初はOMGを中心とするオブジェクト指向に関する技術、その後はFIPAを中心とするエージェント技術の調査検討を行った。FIPAにおけるコンテンツ言語にXMLやRDFを使用する動きがあり、その検討がアルカテルのバウエンス氏により行われていた。

1-4. 「FIPAエージェントにおけるXMLの適用動向

規格協会も、遅ればせながらXMLの標準化を取り上げ、私が幹事となって大手企業の関係者を集め、東京大学の小柳教授を主査に委員会を立ち上げ、提言を行った。

1-5. 「日本規格協会XML関連標準化調査研究委員会の活動」

この委員会では、To Beモデルを設定してAs Isモデルを考え、As IsからTo Beへの移行について議論したり(岡部氏)、テクノロジ・ロビイストのような人材育成(故菊田氏)が話題になった。アウトプットとしてはTSRの渡辺氏等が中心になり、XBRLのJIS化を提言し、作業グループができてJIS化された。

その後XMLはコモディティ化し、eビジネス指向の新技術に対する関心は急激に薄れていった。新規に関心が持たれるようになったのは、OWLのようなオントロジー技術や、ゲノム等の大量情報の管理のためのXMLデータベース技術と従来からSGMLが扱ってきた文書技術あたりに絞られるようになった。

2004年にドコモシステムズからジャストシステムに転職し、xfyの標準化担当とな
り、W3CのAC-Repになると共に、新設されたCDF(Compound Document Format)ワーキンググループのメンバーとなった。その関係からW3Cの標準化動向を紹介した。

1-6. 「複合ドキュメント技術への一考察」

1-7. 「W3C Technical Plenary Meeting参加報告」

2007年にジャストシステムから職業能力開発総合大学校に転職し、それに関連してISO/TC232(人材育成と非公式教育の標準化)の動向を調査している。

1-8. 「情報社会における職業能力開発 : ジョブカードの分析・モデル化と国際標準化動向の検討」

ISO/TC232のスコープは、年功序列、終身雇用の社会から転職社会へと変わりつつある日本の状況にとって極めて重要なテーマとなりつつある。

まとめ:1990年代に入って表現言語のHTMLによるWebが登場し、それがXMLにより構造を持つようになり、最強の情報インフラとなった。しかし2005年以降はXMLもコモディティ化し、技術的な展望は見えていない。むしろWebを活用する社会変化が新たなニーズを創り出し、そのシステム化技術が重要になりつつある。 (大野邦夫 k-ohno@uitec.ac.jp)

著者紹介:大野 邦夫 (おおの くにお) 経歴はこちら

[略歴] 1968年、東京工業大学工学部機械工学科卒業、70年同大学大学院修士課程機械工学専攻修了、電電公社(現NTT)に就職。電気通信研究所、米国ウイスコンシン大学マジソン校派遣、横須賀研究所、NTTインテリジェントテクノロジ(株)、ヒューマンインタフェース研究所などに在籍。95年にNTTを退職、グループ企業のINSエンジニアリング(株)*に転籍(*2000年にドコモ・システムズと社名変更)。同社退職後、(株)ジャストシステムに移り、 主にxfyに関わる標準化とその関連技術の調査を担当した。2007年から職業能力開発総合大学校通信システム工学科教授。現在に至る。

  • Share/Bookmark

No related posts.

1 Star2 Stars3 Stars4 Stars5 Stars (No Ratings Yet)
Loading ... Loading ...