ドキュメントへのアプローチ/(2) 製品開発
2009年 12月 18日
技術動向に続き、製品開発紹介関係の論文をまとめました。最後に書いたのですが、総括として新技術をビジネスに結びつけることが非常に困難になっていることを感じます。ジャストシステムが実質的にR&Dから撤退したことも、この状況に関係していると思います。グーグルやアマゾンのようなマクロなグローバル戦略を持たない技術開発や研究の意義が問われているような気がします。
ドキュメント技術へのアプローチ―大野邦夫氏による研究・開発の軌跡
目次
2. 製品開発:マルチメディアドキュメントからXML応用システムへ(本記事)
9. ヒューマン・インタフェース
10. テクニカル・コミュニケーション
2. 製品開発:マルチメディアドキュメントからXML応用システムまで
私が関わった製品の研究開発に関する紹介である。INSエンジニアリング(現NTTドコモシステムズ)在籍当時の1995年から翌年にかけて、 Informix社のORDB、ILLUSTRAを用いるマルチメディアSGML文書データベースを試作した。
2-1. 「ORDBによるマルチメディア・ドキュメントの管理」
当時INSエンジニアリング社は、米国インターリーフ社 Interleaf 5のSGMLツールキットを販売しており、製造業の研究開発部門を 中心に営業展開を図っていたが、カスタマイズ言語のInterleaf Lispが処理言語としては性能的に不十分、実 用システムとしては不適当であった。しかしCALSのような電子化文書アプリケーション分野においてSGML文書管理システムのニーズは顕在化しており、Interleaf 5のSGMLツールキットに代わるツールの開発が求められていた。
当時出現したばかりのILLUSTRAは、マルチメディア・データベースという位置づけで宣伝されていたが、RDB部分で木構造のポインタを管理することにより、SGML文書の要素管理とする目処を立てた。さらにILLUSTRAがサポート する種々のデータブレードと連携させることによりSGMLマルチメディアデータベースを実現した。この製品は、 NTTの研究所に導入され、マルチメディアドキュメントの研究に使用された。
その後、Informix社は、ILLUSTRAのサポートを停止することとしたために、ILLUSTRAの代わりにORACLEを用いるシ ステムを開発した。マルチメディア管理や、他のデータブレードとの連携部分を削除すると共に、SQL言語を ORACLEに適合させることにより、比較的容易に改造することができた。
2-2. 「SGMLデータカートリッジによる文書管理システムの構築」
このシステムは、凸版印刷と松下電器産業によりかなりのライセンスが出荷され、地方銀行における業務管理ドキ ュメントや製品取扱説明書などに使用された。
XMLの普及に伴い、JavaやJavaScriptによるXML処理システムが続々と世の中に出現しつつあった。その頃、日本人 によるオブジェクトスクリプト言語であるRubyが紹介され、INSエンジニアリングの吉田正人氏がDOMとSAXに相当す るAPIを開発した。このAPIを用いる簡易なアプリケーション連携(EAI)のための応用システム(XMLデータ統合サ ーバ)を開発した。
2-3. 「オブジェクト指向スクリプト言語RubyによるXML応用システムの検討」
ORACLEによるデータベースアプリケーションとLotus Notesによるメール機能とワークフロー管理機能を連携させ る新たなアプリケーションを開発し実際に使用し機能を確認したが、性能的にも問題はなかった。しかし、Javaや JavaScriptによる類似機能の製品が多数販売されているので、INSエンジニアリングとしての製品化は見送られた 。
2-4. 「XMLを用いた簡易ビジネス情報ライブラリの検討」
このシステムは、INSエンジニアリングのある事業部が顧客向けに開発した企業情報管理システムの一部を汎用的 なミドルウエアとして製品化したものである。特徴としては、クライアントをWebブラウザとしてどこからでもア クセス可能とすると同時に、汎用性を持たせるためにミドルウエアとしてXML関連ツールを活用したことにある。 従来、RDBアプリケーションはODBCやJDBCのような形式でAPIプログラムを開発していたが、API部分にXML処理系を 挿入し、文書管理にも適合させるようにしたものである。
ジャストシステムでは、xfyの標準化関係の仕事を担当した。xfyの適用分野として財務諸表の国際標準フォーマッ トであるXBRLを検討した。XBRLは、業界毎にタクソノミーと呼ばれるデータ形式が定められ、これはXMLスキーマ とリンクベースで構成される。この財務諸表データに基づき、種々の会計関係の報告書が作成されることになる。 xfyの特徴の一つは、双方向変換が可能なXSLTであり、WYSIWYG形式でXBRLタクソノミーに基づく会計報告書を作成 することが出来る。本システム (xfy for XBRL) ではそれを具体的に実証しデモを行った。
まとめ:SGMLデータブレード、SGMLデータカートリッジ、XMLデータ統合サーバ、XML簡易ビジネス情報ライブラリ 、xfy for XBRLにおいて、ビジネスになったのは、SGMLデータカートリッジ、XML簡易ビジネス情報ライブラリで あり、これらはユーザーニーズに従い既存モジュールを組合せたソリューションに過ぎない。新技術で差別化を 図り市場を獲得するようなビジネスは、もはや現実的ではないのかもしれない。それが事実とすると、日本のIT系 企業のR&D部門が衰退するのも分かるような気がする。 (大野邦夫 k-ohno@uitec.ac.jp)
著者紹介:大野 邦夫 (おおの くにお) 経歴はこちら
[略歴] 1968年、東京工業大学工学部機械工学科卒業、70年同大学大学院修士課程機械工学専攻修了、電電公社(現NTT)に就職。電気通信研究所、米国ウイス コンシン大学マジソン校派遣、横須賀研究所、NTTインテリジェントテクノロジ(株)、ヒューマンインタフェース研究所などに在籍。95年にNTTを退 職、グループ企業のINSエンジニアリング(株)*に転籍(*2000年にドコモ・システムズと社名変更)。同社退職後、(株)ジャストシステムに移り、 主にxfyに関わる標準化とその関連技術の調査を担当した。2007年から職業能力開発総合大学校通信システム工学科教授。現在に至る。








