7th DDシンポジウム視聴記 (2):IA+CMSの実践
2009年 12月 2日
基調講演のトップは、楽天 (編成部)・清水 誠氏の「IA+CMSにより、コンテンツの制作・管理・配信はこう変わる」。IA+CMSという方法論と実践事例、提言で構成され、こうした研究会のキーノートとしては、ズシリと重い「基調」である。(鎌田)
カタいドキュメントとユルいドキュメントの統合管理
CMSは在来型のドキュメント(紙媒体と言わず、仮にdiscrete document=DD と称する)とWeb(これも仮にassociated document=ADと称する)の両方にまたがる領域で、コンテンツの制作・管理・配信をサポートする。他方でIAは「複雑な情報を整理しユーザに分かりやすく伝えるための方法論」で、CMSを方向づける重要な指針だが、こちらはWebの世界から発している。すぐにレスポンス(訪問数、滞留時間など)が計測可能なWebの性格上、ドキュメントの機能(誰がどう読むか)により敏感になり、短期間にフィードバックが進んだ結果生まれた。これまでDDのほうは、モノとしての作り込みにスキルと時間・コストを要したために、機能については相対的に手薄であったと言わねばならない。
平たく言えば、DDはカタいドキュメント、ADはユルいドキュメント。出発点としては、前者は<堅・固・硬>で静的、後者は<脆・緩・柔>で動的だ。一見して正反対のようだが、現実には、ますますハイブリッド化が進行しつつある。DD (多くはPDF)を配布するのはWebだ。また前者自身もシステム・連携化(ハイパードキュメント化)しつつある。他方でWebの情報やサービスにはドキュメントとしてのカタさも要求されている。IA+CMSは、21世紀のハイブリッド型ドキュメント環境において必須の技術となったのである。清水氏は、両方の世界に通暁した実践家というユニークな存在で、当日のテーマには最も相応しい講演者の一人だ。
UX最適化のためのプロセス管理
清水氏の講演は、コミュニケーションが複雑化するなかで、コンテンツ管理には、IA方法論を導入したコンテンツ管理が必要となっていること、それにより制作・管理・発行はどうなるかを、貴重な実践事例を通して明らかにし、今後への提言で締めくくる、という流れで話された。事例で感心した経験はあまりない。特定技術に寄っていたり、特定企業に寄っていたりで、一般化できる点が乏しいからだ。しかし清水氏の紹介した、タイプの異なる4つの事例(ITベンチャー/楽天/外資系B2C企業/官庁)は、いずれもIA+CMSという観点から適切に総括されており、非常に価値あるものだった。日本最大級のWeb企業でのマーケティング・ドキュメント(Web/DTP/その他)の制作・管理・発行と、ベンチャー企業のWebの運用改善、外資系、官庁の文書管理を同一人物が手がけた例などざらにあるものではない。
CMSは文書管理や図書館情報管理など、さまざまな源流から入り込んでおり、それ自体は方向性も何も持っていない。厄介なテーマである。だからIAが導かないと何のために何を管理するのか分からなくなり、現場作業のための素材の整理(道具箱)なのか、様々なバージョンの文書(書庫)なのか、概念も混乱してしまう。IAというドキュメントの機能に対する最適化方法論は、両者を統合的に管理する唯一の解といえよう。とはいえ、これは簡単なことではない。伝統的に制作者も管理者もモノとしてのドキュメントから発想し、ユーザーを(もちろん意識はしても)第一動因としてドキュメントの構造化や管理を行った経験を持たないし、そんなことを教わってもいない。清水氏の事例が貴重なのは、IAのパイオニアによる苦闘の記録であり、経験者でなければ知り得ない情報を含んでいたからだ。
重く、内容の濃い講演で、果たして当日のキーノートとしてつながるのか、とも思ったが、その懸念は後の講演者の話で払拭された。(鎌田、12/01)








