アップル・タブレットのビジネスモデル (1)
2010年 1月 22日
「アップルがオールドメディアにニューマネーを見つけた」という21日付の記事で、Wall St. Journal の二人の記者は、ジョブズ氏が新製品 (1/26発表予定)のタブレットに託したビジネスモデルを推測している。iPodが音楽産業を変えたように、iSlate はメディア産業をリパッケージしようとしている、ということだ。
リークから浮かび上がるマルチメディア・ビューワの裏側
すでによく知られるところとなったが、アップルはガジェットを単体ではなく、総合的なユーザー体験を集約するインタフェースとしてデザインする。前提とするビジネスモデルがあり、それに最適化されたプラットフォームのAPIとUIを開発するのである。モデルにはコンテンツ・プロバイダーやアプリケーション開発者、サービス事業者との協業が前提されており、リリースまでにはすべて整理された形で発表する。また、特定のパートナーに依存することなく、つねに優位な立場で交渉する。それが可能なのは「アップル神話」を支える忠実なユーザーの存在があるからだが、細かいテクニックも忘れていない。秘密主義と対になった情報の意図的リークで、性格の違うメディアを選択的に、じつに効果的に使う(元担当者がその一端を明らかにしているが、使われるのは電話のようだ)。
つまり、WSJをはじめ、多くのメディアはアップルの情報操作に協力しているとも言える。その内容の多くは正確だが、観測気球ということもある。リークは日本の官庁・企業なども日常的にやるが、アップルはじつに巧みで洗練されているのである(さもないと反発を招く)。ちなみに、記事を書くときだけはジャーナリストを自任する筆者は、このリークが大嫌いだ。取材される側が自社のために工作するのはプロの仕事として評価できるが、株価にも影響するようなことに協力するのはもの書きとしては問題がある。だからリークされた内容を含めた「公開情報」を分析しているほうが気が楽でいい。
商業メディアを重視。しかしタレ流しでなく“ベストコンテンツ”
WSJの記事によれば、今回のリーク情報は以下のようなものとなる。
- ターゲットはファミリーとキャンパス
- 複数のメンバーで共有し、一緒に見る(「パーソナル」でないことに注意)
- 電子教科書のオーサリング技術を開発している
- 画面表示をスムーズに変換できる技術を開発している
- 仮想キーボードでの入力を可能とする
- News Corp.など複数のニュースメディアや書籍出版社と提携交渉をしている
- CBSやディズニー (ABCを保有)と月間契約制の配信について交渉している
- YouTubeを保有するGoogleと異なり、有料コンテンツ販売を重視している
- 素人コンテンツの開拓より“ベストコンテンツ”へのアクセスを重視
- 旧メディアの販路拡大に協力する救世主として登場する
- 新しい課金方式を考えている
このモデルは、大方が考えるより、はるかに「保守的」に見える。Googleが推進してきた無料モデルに対して有料モデルを対置し、コンテンツビジネスとの調和をはかっているかに見える。しかし本当にジョブズ氏は旧メディアの救世主になる気があるのだろうか。(続く)。







