知恵は過去に潜む:ゲーム産業の進路

2010年 1月 18日

コンテンツの供給過剰、ユーザーの人口減 (時間制約)、低価格化・グローバル化というゲーム産業の構造的問題に対して、高付加価値 (高価格)化で対抗するモデルは壁にぶつかった。では専用機を中心としたハイエンドと汎用機を中心としたローエンドのほかに第3の道はあるのか。新 清士氏はそれを「3,000円プラットフォーム」として提示する。 (日経IT+PLUS)

リンク記事

by 新 清士、日経IT+PLUS、1/8 and 15/2010

ゲーム市場に必要なのは3,000円プラットフォーム!

ゲーム・ジャーナリスト、新 清士氏の分析は、いつもながらシャープだ。
彼はゲーム産業の構造問題を、「人間がコンテンツを消費する時間速度が追いつかないほどデータ流通の技術革新が進み、コンテンツの極端な供給過剰状態を引き起こしている」と分析する。ユーザーは「そのゲームが提供してくれる『時間の価値』」(何時間遊べるか)に対して金を払うが、数万タイトルにもなるApp Storeのようなネット流通の世界では、相場観が消滅するので、逆に大型タイトルは生まれず、市場は混乱し衰退する。

新氏はこれを、瓶詰め権を握ったボトラーとの関係の秩序化に苦闘した20世紀初頭のコカコーラ社、そして1980年代初めに、一時2,000万台以上を売りながら、オープンにしたことでソフトの粗製濫造を招き事実上消滅した、1982-3年のアタリ社の例を引きながら、乱立による混乱は、結局ハード企業が意図的に参入障壁をつくることでソフトの秩序を維持してきた日本型プラットフォーム・モデルへの回帰に導くと分析する。

つまりユーザーが価値の保証を期待するようになるので、再びハードウエアを中心とした新しい主導権争いを通じて新しいプラットフォーム秩序が生まれるというのだが、その上で「ゲーム市場にとって必要なのは、3,000円前後の価格帯の新たなプラットフォームを構築することである。」と提言している。iPod Touchの小売価格が2万円弱、高画質なGoogleのNext Oneも部品レベルで140ドル (1万2,000円台)と推定されているので、3,000円も確かに現実性がある。もちろん、コンテンツやネットサービスを含めたビジネスモデルを前提にした話だ。

同じことは書籍についても言える。Kindle成功の最大の要因は、専用書籍端末によってコンテンツライブラリ、ユビキタス環境、UIを通し一貫したユーザー体験 (UX)を設計したためで、これは任天堂やソニー、アップルと同じだ。UXには秩序が不可欠なのだ。わが携帯やPCの「電子書店」を見て鼻白むのは、下品なサイトデザインと否応なく目に飛び込む三流~五流のエロ/マンガのタイトルで、少なくとも人前では見れないし、片隅に「文学」とか「歴史」などあっても、前者の印象に圧倒されて逃げ出してしまう。古本屋なら、専門書とエロが共存するところへも堂々と入っていけるのだが、PCの場合、自宅の前にエロ本を並べられた感覚だ(考えすぎか?)。ともかく、ゲームも本も、やはり専用端末がベストだ。それが3万円でなく3000円なら。

たしかに、もうハードウェア「プラットフォーム」がそれ自体で儲かる時代ではないのかもしれない。ネットPCもスマートフォンも、通信契約とのバンドルで売っている。されに通信も選択可能になると、ますます広告/通販ビジネスとのバンドルが主流になるだろう。ゲーム、書籍、音楽・映像、ニュースというコンテンツと広告/通販のグルーピングが、どのような形で進むのか。ネットビジネスの変容は続く。 (鎌田、01/18/2010)

  • Share/Bookmark
1 Star2 Stars3 Stars4 Stars5 Stars (No Ratings Yet)
Loading ... Loading ...