E-Bookと印刷業の問題を考えたいと思っていたところ、中西秀彦氏のブログに「我、電子書籍への抵抗勢力たらん」という記事を拝見して仰天した。京都の老舗印刷会社の(元?)若旦那にして大学講師。印刷とデジタル技術などを中心とした6冊の本の著者である中西氏が「抵抗勢力」となったのでは一大事である。そこでかねての問題意識をぶつけて対話をお願いしたいと思い立った。幸いにしてご快諾をいただいたので、以下のような趣旨と構成で進めていきたいと考えている。
むろん、中西氏の真意は、E-Bookが普及しようとする現在、印刷業の存在理由を再定義し、正当な権利の主張を行い、新しいビジネスモデルを構築しようというものである。けっして「保守反動」でもアナクロでもないので誤解なきように。
筆者は、日本の出版の技術的側面を支えてきた印刷会社抜きでE-Bookの創造的な発展はあり得ないと考えている。それに現在の出版の危機の大部分は、デジタルのせいではなく、「電子 vs 印刷」のような発想も本筋から外れていると考えている。これまで出版の電子化は、主として印刷会社によって進められてきた、版を作っているのは印刷会社であり、それが変わらない限り、印刷会社の重要性は変わらない。むしろビジネスチャンスは広がるはずなのだと思う。
この対話シリーズでは、E-Bookに対して問題を提起しながら、デジタル時代の印刷業のビジネスモデル、出版と印刷のあるべき関係、印刷の新しい可能性などを議論していきたい。筆者が考える「出版」は、出版社が考える「出版」よりは広く、英語のパブリッシング印刷会社が考える「印刷」に近い。本ページのコメント欄や読者のブログ、Twitterなどを通じたご質問、ご意見、ご要望などを歓迎する。様々な立場の方の参加により、この対話がリッチなものとなることを期待している。
トピックとしては、いまのところ以下のようなものを考えた。
- 紙の世界、電子の世界:何が違うのか
- E-Bookは印刷 (本)にとってほんとうに脅威なのか
- 出版社(者)に言いたいこと
- 政治/行政に言いたいこと
- オンデマンド・プリンティングに可能性はあるか
- 印刷業の「電子出版」への歩み:組版の先に何があるか
- E-Bookビジネス(教育、マニュアル、カタログ、行政…)と印刷業
- 印刷会社が「中抜き」されないために何が必要か
- 出版社が「中抜き」されないために何が必要か
読者諸賢のご協力をお願いしたい。(鎌田、03/31/2010)
- 第0回:E-Bookとデジタル時代の印刷業<解題> (本記事)
- E-Bookと印刷業 (1):印刷業こそ先頭にいる
- E-Bookと印刷業 (2):紙の桎梏と呪縛からの解放へ
- E-Bookと印刷業 (3):版が付加価値を生む
- E-Bookと印刷業 (4):生き残りをかけた軟着陸戦略
- E-Bookと印刷業 (5):デジタルプラットフォーム
- E-Bookと印刷業 (6):デジタル時代こそ創造的協調
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