知識情報のコミュニケーションとソーシャルネットワーキングという観点から出版と出版ビジネスを考えてみようというのが第3回セミナーの趣旨だったが、ソシオメディアの篠原稔和さんとWebアナリストの滑川海彦さんという最強のメンバーを得て行われることが決定。そこで、改めて内容構成を見直し、「出版の死と再生」という大それた歴史的テーマを議論する機会とすることを考えた。来月(6月22日)には楽天の清水誠さんにCMSとIAという観点から、出版の技術的プラットフォームを取り上げる。(第3回セミナーの詳細はこちら)。
第3回セミナー:「E-BookをめぐるWebと出版社」解題
「電子出版」は30年以上前からあり、最初は「電子組版/DTP」として、次にCD-ROM「マルチメディア」として、また「携帯/書籍端末」として登場しましたが、いずれも出版そのものに影響することはありませんでした。それらは知識情報のコミュニケーションという社会的機能を果たしている出版の個々の側面(製作、編集、配布)の電子的置き換えであって、出版の社会的機能そのものの電子化ではなかったからです。出版社も読者も、もっぱらコンテンツにばかり注目し、肝心の機能は自明のこととして無視し、「活字離れ」を仕方のないことのように受け容れてきたと言えます。
アマゾンのKindleは、それが錯覚であることを実証しました。何を実証したか? インターネット、とくにモバイルインターネットの世界では、出版コンテンツそのものではなく、出版を中心とした社会的コミュニケーションのダイナミックな側面が問題であるということです。Amazon/Kindleは「電子書籍端末」ではなく、「電子書店」ではなく、「自主出版サービス」ではなく、「読書サークル」ではなく、それらすべてです。しいて言えば著者/著作物と読者の間のコミュニケーションにおける付加価値の提供を志向しています。「コンテンツ」の「流通」や「表示端末」にばかり注目していたのでは、出版をめぐる付加価値という、ネット上の新しいビジネスのルールの上で展開されるビッグプレーヤー(アマゾン、アップル、Google)の活動の本質も見えてきません。そして何よりも、出版と出版の主宰者としての出版社の新しい役割も見えてこないでしょう。
簡単に言うと、21世紀の電子出版は、インターネットにおける知識コミュニケーションであり、コンテンツはそのコンテクストに依存して(少なくとも)経済的価値を持つということです。新しいノードが次々と生まれて一瞬の輝きを放ち、拡大し、やがて活性を失い、いつか別の結びつきの中で再生するということの繰り返し…。Webは遍在的でリアルタイムなコミュニケーションをサポートすることで、ログを記録するだけでなく、リアルタイムに利用することも可能とし、短期間で社会のコミュニケーションの中での重要な位置を占めるようになりました。広告/販売という商取引に関する活動が、知識情報のコミュニケーションとしての出版に注目するのは当然であり、それにより巨大なビジネスが展開されようとしています。それはコンテンツそのものよりも、コンテンツが意味するもの(コンテクスト)に関連したビジネスが主体となるでしょう。
つまり、ネットビジネスが注目しているものはコンテンツではなく、コンテンツをめぐるコミュニケーションのダイナミズムなのです。出版社が紙とともに守ろうとしている旧来の「出版文化」は、そのままでは継承すら困難に陥っていくでしょう。著者と読者、読者と読者など、不定形なコミュニティがネット上に生まれる中で、出版社がカヤの外で生き続けることは(少なくとも産業としては)できないからです。出版ビジネスを新しいコミュニケーション環境の中で再定義することができなければ、出版文化の継承も期待できず、巨大な社会的損失が生じてしまう、というのがわれわれの危機意識です。テクノロジーは、それを味方にできない限り、敵になってしまう厄介なものなのです。今回は、出版社がこの変貌しつつある出版という主要な社会的コミュニケーション形態において、自身を再確立するための戦略を探っていきたいと思います。
イントロダクション「出版のバリューチェーンと付加価値ビジネス」
鎌田博樹(EBook2.0 Forum)
知識情報のコミュニケーションの中心であった出版が直面している問題を整理し、Web時代の出版ビジネスを再定義を試みます。
1. 「ソーシャルコミュニケーションの中での出版:WebとE-Book」(仮題)
篠原稔和(ソシオメディア㈱代表取締役/DESIGN IT!)
Webは多種多様なコミュニケーションが展開されるユニバーサルな「コンテクスト」のメディアとして成長してきました。Webメディアのビジョナリーである篠原氏に、Webにおいてなぜ出版/出版物が注目されるのか、Webビジネスは何を目ざしているのか、出版社はアマゾンやアップルのプラットフォームとどう付き合い、ソーシャルネットワーキングをどう主体的に使っていくべきかなどを自由に語っていただきます。
2. 「出版をめぐるWebニュービジネスの展開」(仮題)
滑川海彦(翻訳家、Webアナリスト)
E-Bookは、モバイル環境と融合することにより、新しいコンテンツと新しいコミュニケーションのコンテクストを形成し、そこに無数のビジネスチャンスが生まれています。『ソーシャルWeb入門』(2007, 技術評論社)でWebメディアの本質を明らかにし、TechCrunch日本版の中心的翻訳者として最新のWebビジネスをフォローしている滑川氏に、ニュービジネスとテクノロジーの動向をレポートしていただきます。
3. 自由討論:「出版の死と再生:WebメディアとしてのE-Bookのインパクトと出版社」
講師と参加者により、デジタル時代の出版/出版社の課題やビジネスモデルなどについて議論していただきます。
第4回(6月22日)予告 「E-BookプラットフォームとしてのCMSとIA」
ゲストスピーカー:清水誠氏(楽天株式会社)
第4回セミナーもお申込み受付中です(定員30名程度)。お早めにお申込みください。
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