6月(22日)の研究講座は「E-Bookの製作環境としてのCMS+IA」を取り上げる。E-Bookの製作環境を持ち、効果的に運用することは、デジタル時代の出版社にとって最大の課題であると考えるからだが、このテーマは簡単ではない。内容と位置づけを理解したうえで、動くものに接して初めて納得がいくものだろう。そこでまず次回のスピーカーをお願いしている清水 誠さんに、こちらの問題意識をお伝えし、やり取りしながら何をどう話していただくかを決めていくという手順を踏むことにした(読者の皆さんからもコメントをいただいて、一緒に考えていきたいので、本サイトで公開とします)。
清水様
「E-Book製作環境としてのCMS+IA」というテーマを立てたのは、これが出版社、印刷会社にとってビジネス的にも技術的にも最も重要なテーマであると考えるからですが、私自身、これはとても大きなテーマだと思っています。E-Bookをつくるにはデジタルな製作・管理の環境が必要だ、という単純な理由のほかに、出版の内容、品質を高め、出版に関するコミュニケーションを活発にし、それによって出版社の経営を安定させるということと直結すると想像しているからです。CMSもIAもWeb以後に生まれたコンセプトですが、これをWebだけのものと考えるには、出版とWebは技術的にあまりに接近しすぎています。そもそもWeb自体ひとつの出版環境として生まれたのですから。出版社や印刷会社、デザインスタジオがバラバラにコンテンツや断片、中間生成物、メタデータを管理・保管していたのではE-Bookはその真価を発揮するものとはならないでしょう。出版にもCMS+IAが必要です。でもどうやって?
昔の出版の仕事の流れは、かなり一品生産的で、よく言えば職人的でしたが、最近では点数を増やすために作品と呼べるようなものは少なくなっています。出版には消費的な側面のほかに記録的、構築的側面があると思いますが、それらがバランスしないと社会的な価値創造にはつながらないわけで、編集者が流れとしての製作に追いまくられていては出版の存在意義は薄れ、外部(主としてオンライン広告ビジネス)から利用されるだけの存在に堕ちかねません。出版のデジタル化は、それ自体としてはフローとしての消費的側面を強めるだけでしょう。だからこそ出版社としての独自の価値を創造する環境としてのCMS+IAに期待しているものです。どうかよろしくお願いいたします。
5/31/2010、鎌田
1. 前提
出版社/印刷会社が取組むべきE-Bookは3つのタイプに分かれるように思われます。
- PDF(固定ページ型)
- EPUB(フロー型)
- ダイナミックE-Book
また、タイトルとしては、(1) 既刊本、(2) 紙/電子両用の新規制作本、(3) デジタルネイティブが対象となります。既刊本のコンテンツは、印刷本のページを機械的にPDF化するのでもない限り、コンテンツ管理 (CMS)を構築する必要があります。このCMSは (2)と (3)にも対応できるものである必要があります。CMSで扱うものには、素材データ(文、表、注、数式、画像、映像…)、情報の構造と配置(スタイル)、各種リンク、エンベッドコード、知識ベース、ルールがあり、さらに個々の要素の版権情報、管理者、利用・改訂履歴などが含まれます。管理する目的は、編集・製作支援のほかに、マーケティング、版権管理、出版社、著者、読者のソーシャルネットワーキングを支援することが重要になってくると思われます。
出版社にはIA+CMSになじみのない方が多いと思いますが、このシステム構築と作業にどの程度の専門性が必要なのか、専門家がいないとやれないものか、編集者にもできることか、システムや運用を外注する場合でもスタッフが知っておくべきことはどんなことか、など、知識、スキルとその取得をどう考えるべきかについて、指針をいただきたいと思います。
2. CMS・IA戦略
これらはシステムとしてもかなり複雑になりますが、経験的に言えば、いくらニーズがあっても複雑になりすぎると忌避され放置されるという傾向があります。マニュアルなど更新や再利用が頻繁で構造が明確なドキュメントにおいてさえ、技術的には簡単なことがなされていないケースがほとんどでしょう。ドキュメント管理の難しさは、技術的なこともさることながら、それが複数の組織にまたがるビジネスプロセス結びついている(あるいは直結しないと意味を持たない)ことにあると思います。ビジネスプロセスは、ワークフローと置き換えてもよいですが、プロセスの再構築や全体最適を目的としています。意思決定がトップダウンで職務分担が明確な組織でないと、プロセスの変更に結びつくような情報管理は組織の壁(セクショナリズム)を越えられず、現場の協力を得られない、ということがあると思います。
出版社としては、悪くすると(A) WebサイトのCMS、(B) 印刷本のためのCMS、(C) E-BookのためのCMSと、互いに関連の深い3種類のCMSを扱う必要が出てくるわけですが、これは事実上不可能だと思います。どうにか(仮想的あるいは実装的に)一つで済ませられないと扱えないのではないか、という懸念があります。また(A)はWebデザイナーや管理者が、(B)は主として印刷会社が、(C)はデジタルプロダクションが(?)それぞれ管理することになるとしても、連携を取る環境がないと多大のロスやミスが生じることになるでしょう。そうならないためにどうしたらよいのか。方法論といくつかのシナリオが考えられると思いますが、呈示していただければ幸いです。(鎌田)
※第4回 E-Book2.0研究講座「EBook制作環境としてのCMSとIA」 6/22開催
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