シナプティックWeb (下):セマンティックを超えて

後半では、T.B-リーが提唱した未来型WebのイニシアティブであるセマンティックWebとの比較でシナプティックWebを分かりやすく説明している。シナプティックWebは説明的概念であって、頭脳明晰な人間が仮構する意味論的世界の実現フレームワークではなく、観察可能な現実から生まれた、ユーザーと実務家による実践的アプローチであることが明らかにされる。「意味」のような複雑な現象を解読する方法にはつねに2つあるが、実務家が選ぶのはこちらだろう。

シナプティックWeb:リアルタイムコミュニケーションの海をナビ ゲートする(下)

著:クリス・ルーエリック・ブランツクリス・サードそして読者

シナプティックWebでは、検索よりもフィルタリングのほうが重要になる。少なくとも、それはコンテンツの探索の際の問題解決を助ける次世代ツールにはなる。検索は無限に近いドキュメントのWebから咀嚼可能なページを選び出すものであるのに対して、フィルタリングは情報の奔流やノード、ネットワークを絞り込み、いま現在のユーザーの変化する判定基準に適合するページを選び出すプロセスである。それはあなたの世界の見方を設定し、絶えず修正していくことで、最終的にデータのほうからユーザーを探し出してくれるようにすることでもある。

フィルタリングはシナプティックWebが力を発揮する機会というだけでなく、それ自体がシナプスと類似したプロセスを持つ。毎日の生活の中での会話や現在の関心事、将来の意向とコンテンツとの対応関係は、機械学習や人の教え、そしてユーザ体験の改善を通じて得られる。これらすべてはシナプティックWebを使いやすく、より強力にするだろう。

こうした変化は、次のような一般的特性にまとめられる。

  • リアルタイムの結合の増加

例:Eメール vs. ストリーム)

  • 結合の型の多様化

例:電話帳(検索=結果) vs. 拡張現実(動画+位置情報+ディレクトリ+個人の関心

  • 結合の密度の増加

例:Quicktime VR(一作者一画像)vs. Microsoft Photosynth(数百人の作者と数百の画像を自動的に当てはめ結びつける)

  • 有機的結合の増加

例:既知のターゲットAPIを車軸モデルでつなげるFacebook vs. 終点が開放され相互運用性のあるP2P接続型を採用するDataPortability

  • 暗黙の結合の増加

例:広汎な統計的関心に基づく型分類 vs. ライフストリームによる関心の変化の自動探知

  • 深層での結合の増加

例:サイトへのリンク vs. 複数のサイトの機能を結びつける組込み式ウィジェット

では「シナプティックアプリケーション」とはどんなものだろう。われわれは以下のような特徴を組合せたものとなると考えている。

  • 2つ以上のカテゴリを結合する(例:人とデータ、コンテンツとコミュニケーション、データとデバイス、場所と会社)
  • 暗黙の結合から、新規/新奇な意味やユーティリティを創造あるいは抽出する。(例:関心のプロファイル、フィルタリング、視覚化…)
  • リアルタイムあるいはそれに近い形でユーザーの振舞いやその他の入力情報に対応して調整される結合
  • 正確性や柔軟性を欠く可能性がある、明示的に定義された結合よりも、実際の振舞いで強弱をつけられる非明示的なコネクションに注目する。
  • Webをプラットフォームとして使う(例:オープンな標準と相互運用性のある端点)
  • 多様なインプットを利用して既存のアプリケーションを拡張する(例:地図にGPSを、関心をデーティングに適用する。)
  • ネットワーク効果で強められる(例:クラウドソーシングされた画像、ソーシャルなジェスチャ)
  • 関連のあるサイトもユーザーと情報のフローで定義でき、どんな目的サイトからも束縛を受けない
  • ・主なインプット and/or アウトプットの一つはストリーム

シナプティックWebはこのようなものとして登場してきた。それは緩い、有機的な関連性を持った小さな断片から構成される。しかし、もっと重要なことは、これらの断片の間の結合関係が断片と同じ重要性を持つということである。結合は相互運用性を持ち、自然発生的な意味の相互作用をつくりだす。ネットワークは2次元の蜘蛛の巣の形から離れ、3次元の人間の脳に似た形をとるようになる。そして何事につけ、結合が生まれるたびに、イノベーションと発見のペースは速まる。

セマンティックWebとの比較

当然のことながら、シナプティックWebとセマンティックWebの関係をよく尋ねられる。語呂が似ているだけでなく、両者が扱っている問題の多くが共通しているからである。これは偶然ではなく、シナプティックWebと私たちが名づけた発想は、過去10年以上にわたるセマンティックWebのコンセプトと実践について、私たち自身やほかの人々が観察したことに基づいている。それはとくに次のような点にまとめられる。

  1. 意味的システムは、いまだに実験室の外に出ていない。概念としてはすばらしいが、実世界の技術上、そして(それ以上に)人間の組織や振舞いから生まれる障害が、広汎な利用を妨げている。いくら頭脳明晰で抜群の集中力を持った人間が、辛抱強く自分の仕事を理解し、適確に分類しても、ほかの人間がわざわざその分類を滅茶苦茶にするために、マシンにはコンテンツと属性との適切な結合を行えないことがあることを、困ったことだが認めないわけにはいかない。
  2. 意味の分析とデータ分類は、ネットワーク上の結合を豊かにする方法の一つでしかない。意味的システムは規模の問題を克服するかもしれない。われわれはそれが実現することを期待している。しかし、リアルタイムWebの登場以来、情報の発行、共有、連結を効果的に行うツールが次々に登場し、システム(機械学習、ニューラルネットワーク等)のパワーを使う形でノード間の結合をリアルタイムで行うことが容易になり、人々のジェスチャを計測することで意味と結合を推論することが可能になっている。
  3. より豊かで緊密な結合を持ち“インテリジェント”なWebに向けた真の進化が始まっている。私たちはこの進化が、完全にコンテンツの集積とコネクションの密度の結果として起きていると考えている。それは今日すでに存在し、工学的改善よりは生物的/神経学的な変化のほうに似たプロセスを通じて行われている。

下の表は、セマンティックWebとシナプティックWebとの差異を明確にするために作製した。(了)

“The Synaptic Web”, written by Khris Loux, Eric Blantz, Chris Saad and you…

(Translated by EBook2.0 Forum)

セマンティックWeb シナプティックWeb
焦点/目的 規範的 – Webの将来ビジョンと実現フレームワーク 説明的 – 現に起きていることの理論化の試み
主なメタファー 言語/意味論/アーキテクチャ 生物学/神経科学/進化
主な担い手
大学、研究機関 ユーザー/実務家
フレームワーク 構造化/組織化 “可塑的”
主な結合関係 コンピュータ – コンピュータ 人– コンピュータ – 人
結合の実現手段 標準/仕様 ユーザーの行動とジェスチャ
参照アプリケーション クラウドソーシング, リンク付ストリーム
テクノロジー RDF, XML, OWL, マイクロフォーマット, etc. ActivityStreams
主な課題 Complexity, Scale, Deceit エントロピー

参考文献

関連リンク

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