米国市場“四半期マイナス”の読み方

米国のE-Book市場が2Qで初の“四半期マイナス”を記録した。半期で前年の売上をクリアしているという一面を見れば、なお急成長ではあるが、四半期での成長を止めたことは異変とみられる。iPadの登場とE-Book価格引上げという変化をどのように読むかが、初のマイナスを解く鍵となるだろう。アマゾンなどの低価格戦略は市場の微妙な変化を反映している。(近日刊行予定のEB Magazineテスト版用予稿。)

急成長の終わりか、それとも“踊り場”か

全米出版社協会 (AAP)が19日に発表した6月のE-Book出荷統計(卸値ベース)は、118.9%増の2,980万ドルと(前年比2倍を既定値とするなら)まずまずの数字だったが、2010年第2四半期(4~6月)の数字は8,870万ドルと、前期の9,100万ドルを若干下回った。たいしたこととも思えないかもしれないが、初の“前期比マイナス”の意味することを穏やかに受け止められない人も少なくない。

2010年前期(1~6月)の合計は1億7,970万ドルで、すでに2009年全体の1億6,950万ドルを上回り、 通期では2倍を超えることは確実なのだが、それでも四半期連続の売上増をどこまで続けられるかを重視する米国のセールス・マネージャーの感覚では、これは注意すべき数字で、対策が必要な構造的問題の徴候ということになる。Q3の数字は11月まで待たねばならないが、そこで1億ドルの線を超えないようであれば、急成長の終焉を意味することになろう。

もちろんE-Bookに限らず、市場が対前年比で2倍以上の成長を続けるという状態は、そう続くものではない。そろそろ鈍り始めても不思議はないのだが。いつ落ち始めるかで放物線の下降と収束ラインの予想が大きく変わってくる。E-Bookでいうと、100%成長があと1年続けば新刊書に占める電子本の金額シェアが20%を優に超えることにもなるので、心理的にはとても大きい。出版社はE-Bookに追われている状態なので、とりあえずホッとする人も落胆する人もいるだろう。

iPad効果は微弱だが、値上げ(?)で数量は減少

1Qの数字は、今年1月の3,190万ドル(前年比261.2%増)という数字に影響されたものだ。クリスマスにKindleが売れた反映と言われている。ならば2Qの数字には200万台以上売れたiPadの数字も反映されてよいはずだが、これは予想外に小さかった。iPadユーザーが無料のコンテンツばかりをダウンロードした可能性もないではないが、LCDタブレットは従来型の本を買って読むためのツールではないという事実は、秋までには常識となってくると思われる。

4~6月にかけては27.4M→29.3M→29.8Mという小幅な推移で、ついに1月の水準に及ばなかった。3Qの数字には、Kindle 2の値下げによるE-Bookの売上増が反映されるはずだが、クリスマス前に1月の数字を超えられるかどうかが注目されている。4月は大手5社による「エージェンシーモデル」の導入で、$9.99というプライスキャップが外れ、売れ筋本では$12.99が多くなった月でもある。それによる購買行動への影響が注目されたわけだが、数字の動きをみる限り、単価が最大3割上がった分、買い入れを減らしたと考えられる。潜在的な市場が少なからず実現しなかった可能性が強い。E-Readsのリチャード・カーチスなどは、消費者が値上げに対抗したとみる(8/23)。

すでに米国の多くの関係者が指摘していることだが、E-Bookはハードカバー、ペーパーバックとならぶ第3のコンテンツ提供形態ではあっても、デバイスを使って読めるデータファイルにすぎず、在庫も配送も不要なので印刷本に近い価格は不当というしかない。E-Bookは合理的な方法で出版市場を拡大させる手段であり、コストを無視した不合理な価格設定で出版社がそれを阻止しようとするのは(後世からみれば)自殺行為としか見えないだろう。出版社が13ドルを墨守しようとすれば、少なくともE-Bookについては著者が独自出版を試みるようになるだろう。金額よりも購買件数を重視するアマゾンなどオンライン書店は(アップルも含めて)低価格化への圧力をますます強めていくことは間違いない。(鎌田、08/24/2010)

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