2010年にデジタル出版革命の本質と方向を仮説として提起した「E-Book2.0 研究講座」プロジェクトは、第2期でいよいよE-Bookの可能性を現実的価値に変える分業関係、出版ビジネスとその環境を定義するという課題への挑戦に移行します。第1回セミナー(3/23)では「編集2.0のプロフェッショナリズム」と題して、出版業務の中心としての編集の問題を取り上げます。その問題提起に入る前に、プロジェクトの位置づけを再確認しておきましょう。
出版は21世紀メディアビジネスの中心となる
このシリーズを「プロジェクト」としたのは、具体的なゴールを持ち、それを達成するための構造や方法、プロセスを意識しているためです。セミナー商売を考えると「人が入りそうな」「スポンサーが付きやすい」テーマでやるのが常道なわけですが、デジタル出版革命という歴史的な大テーマを設定しているEBook2.0の場合は「知りたいこと」「知る必要があること」を知るのが目的なので、敢えて体系的にアプローチしています。皆様のご支援をいただき、昨年は疎漏がありながらも、変化の本質と方向を確定するという第1期の目標を達成できました。
さて第2期で目ざしているのは、第1期の結論を踏まえた「メディアビジネスの再定義」です。「デジタル出版革命仮説 1~5」で、私たちはこの「革命」を流通・制作・配布の3つの様相で捉え、それらが段階的に合流することで、人類史上初めて物理的手段に依存しない知識コミュニケーションの革命が実現するものと考えました。さらに風呂敷が広がった感じですが、米国での「元年」体験によってなすべきことが見えてきた気がしています。
ここで「メディアビジネス」としたのは、書籍・雑誌・新聞・放送・音楽・ゲーム・教育といったカテゴリー間の本質的な差異・障壁がなくなり、なんらかの融合・再編が進行することを想定しています。しかし、視点としては書籍・雑誌を中心に見ています。それは、これら最古の活字メディアが、フルデジタル時代には他のメディアの要素を吸収し、21世紀型のメディアのイニシアティブをとる上で最短距離にいると考えるためです。フルデジタル時代の出版を「守り」より「攻め」で考えることで、この千載一遇の好機を捉え、衰退産業から21世紀型(=知識コミュニケーション型)メディアビジネスへの大逆転を導くことが出来ます。
デジタルの制約と可能性を知り、つかむ
第1期で見たように、新旧コンテンツの電子的流通として始まった「革命」ですが、最初の段階で最も重要なことは、(1)デジタルサイクルの完結、(2)流通中心のバリューチェンの形成、(3)小売からみた購入者、読者の可視化、という3点だったと思います。いずれも出版とそのコンテンツに長期的に大きな影響をもたらすものですが、目に見える形で起きたことは、ただ電子ファイルを配信するというだけのことだったので、出版人の仕事にはほとんど影響することなく、ただ「日本語表示がどうか」「売れるかどうか」「印税は」といったことに関心が集中したのは当然かもしれません。
E-Bookは編集・制作・取次・小売の現場に関わる出版のプロが、その経験とアイデアを注ぎ込んで参加しない限り、ビジネスとして成功する可能性は非常に低いでしょう。価格、機能、ユーザー体験、入手性、社会性などの価値は、オンライン配信・決済など一般的なWebビジネスからでは得られないものです。媒体がデジタルであろうと紙であろうと、仕事は同じ出版です。出版のプロが本気で参加せずに成立つほど甘いビジネスではありません。他方で、「デジタル」の制約と可能性は、印刷本の制約と可能性とは著しく異なっています。その違いはプロが自ら参加する中で自修・自得していく以外にありません。
EBook2.0 Projectの第2ステージでは、これまでの実践経験や理論、テクノロジーを基に、21世紀型メディアビジネスとその中で必要になるプロフェッショナリズム、スキルとツールについて方向とロードマップを明らかにし、Web上でプロトタイプを作っていく予定です。多くの方のご協力・ご参加をお願いする次第です。 (03/06/2011)
E-Book 2.0研究講座 (第7回) 「“編集2.0”のプロフェッショナリズム─ E-Bookプロジェクトの主役としての編集者のスキルと道具箱」 2011年3月23日(水) 13:30-17:00
研究プロジェクト第1期総括 「デジタル出版革命仮説」
- デジタル出版革命仮説:(1)出版とは何か
- デジタル出版革命仮説:(2)フルデジタルの意味
- デジタル出版革命仮説:(3)幻の元年
- デジタル出版革命仮説:(4)7つの勘違い
- デジタル出版革命仮説:(5)革命の3つの様相(完結)
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