E-Book価格の将来は?:米国の見方

Digital Book Worldは、作家や出版界の知的指導者、メディア理論家、エンジニアなど、現代の“ブックピープル”による、今日的課題に対するシャープな洞察を3語で表現するシリーズを掲載しているが、ここでは「価格問題」についての11人の発言集を紹介する(編集制作会社Winning Editsを経営するマット・ガーランド氏によるもので転載自由と明記されている)。In Three Words: What is the Future of E-Book Pricing, by Matt Gartland, 5/9)

  • controlled by marketplace市場によるコントロール」(ジェレミー・グリーンフィールド、Digital Book World編集長)
  • readers rule 「読者が決める」(ボブ・メイヤー、ベストセラー・ノンフィクションライター、コンサルタント、出版社創業者)
  • balanced and profitable 「均衡と収益性」(ジョシュア・タレント、eBook Architects CEO)
  • big dogs decide 「強い者が決める」(アンヌ・コスティック、Foxpath IND社コンテンツ・コンサルタント)
  • a moving target 「移動標的」(ドーン・ブルーノ、商務省、貿易政策担当上級スペシャリスト)
  • fluid, dynamic, cheap 「流動的、ダイナミック、廉価」(キャロライン・マックレイ、作家)
  • flexible, evolving, consumer-oriented 「柔軟性、変化、消費者指向」(アダム・サロモン、Harvard Common Press発行人)
  • low, lower, free ♦「廉価、さらに廉価、そして無償」 (エル・ロスロリアン、作家、独立系出版)
  • price reflects value 「価値を反映する価格」 (バーバラ・ギャレットリー、元版権エージェント)
  • ask again tomorrow! 「明日また聞いてみよう!」 (ジーン・カプランスキー、Aptara社デジタル・ソリューション・アーキテクト)
  • predatory, dynamic, subscription-based ♦  略奪的、ダイナミック、購読制」(アンドレア・ニスベット、ワークマン出版)

変わる価格概念

編者による偏りはあるだろうが、市場によって変動する(それも下方に)というのが米国のブックピープルの共通認識と考えて間違いないように思われる。ちなみに、日本の出版人の価格に対する“呪文”を英語で表現すれば、Carved in Stone(石より硬い、神聖不可侵)といったところか。そうした人々は、本の価格は消費者とは無関係に、主として「原価」に基づくべきだというのだが、生産調整や第三者による買取保証といったシステムでもない限り、原価を小売価格に反映させるのは困難だ。現実には計画通りには売れずに原価を回収できない赤字出版物が大半であり、そうした赤字分も「原価」には反映される。原価とは、出版社にとっての経営管理上の指標にすぎない。それを社会的に押し通そうとすると市場が歪む、その歪みを権力によって保証してもらおうとすると出版が歪み、社会が歪む。権力は必然的に出版社と出版物を選別することになるからである。言論・出版の自由を売り渡したくないならば、出版社は原価割れのリスクを背負わねばならない。

これまでの出版流通は、再販制以外はなんとか業界の自主規制で機能してきた。これは江戸時代の「本屋仲間」というギルドに起源を持つ伝統であると思われるが、新参者、外来者を陰に陽に差別するという側面もあった。ネット上のデジタルコンテンツはそうした秩序から離れたところで成立する。そこで原価を根拠とする定価主義を制度として貫くには、権力の保護(介入)が不可欠だ。われわれが懸念するのはそこで、苦しくても頑張っていただくしかない。他のあらゆる商売と同じように。(鎌田)

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