市場調査会社のコーウェン(Cowen and Co.)が、アマゾンのKindleの販売台数は2010年に500万台(140%増)、Kindle Storeは7億ドル(195%増)に達する、と推定したことをロサンゼルス・タイムズ紙は伝えた(10/11)。iPadは急成長する市場を上回るアマゾンの快進撃を妨げるどころか促進しているという。Kindle Storeの顧客の2割あまりはKindleを持っていないが、iPadユーザーの31%は、もっぱらKindle Storeから本を購入している(iBooks利用は60%)。しかも年間25冊以上を読む層に限れば差はほとんどない。
アマゾンの敵はiPadにあらず
2010年のE-Book市場におけるシェアについて、コーウェン社はアマゾンが76%、アップルが5%とみている。2010年の市場規模は9.22億ドルと推定されていることになる。同社の予測では、この数字は2015年には51%と16%にまで縮まる。つまり、2社以外のシェアは、19%から33%に増加するということだ。ここにB&Nからソニー、Koboなど数十がひしめくとも思えず、来年以降は買収によるシェア競争が進むと思われるが、アマゾンが50%を割る事態は考えにくい。
アマゾンという会社、あるいはE-Bookという市場は、メディアや投資家にはなかなか理解されにくいようで、ほぼつねに過小評価される。年明けにはiPadの登場で簡単にシェアが覆ると考えられ、それが多数意見だった。メディアはKindleとiPadを(見当違いにも)機能・性能で比較し、iTunesとKindle Storeを数で比較した。実際にはKindleは読書端末、iPadはiPod/iPhoneの延長でのメディア・プレーヤーで、カテゴリーが異なる。現在の本を読む限り、薄く、軽く、何よりも紙に近いほうがいいに決まっている(写真左)。同じ4輪車ということで、用途とユーザーを異にする軽トラックとスポーツカーを比較するような見方は、さすがに今年で変わるだろう。
本を実際に買う消費者以外には理解されにくいのだが、アマゾンの実体はKindleにはなく、サービスにある。それはシステムとして抽象化(論理化)されており、地味なユーザーインタフェースは自己主張せずに、PCからiPad、BlackBerryまでのあらゆるオンライン端末に遍在する。消費者のユーザー体験は必ずデータ化され、改善(最適化)に使われる。顧客指向は徹底しており、1週間以内の返品制、決済方法の柔軟性(クレジットカード以外も選択可)は、ITを使ったビジネスプロセス管理(BPM)やビジネスルール管理(BRM)を通じて到達した最適解であったと思われる。21世紀のビジネステクノロジーは、ハードやソフトではなく、現場での運用の方法論に本質があるが、アマゾンはそれを確立している数少ない会社なのである。
2015年までには市場はかなり変わったものとなる。現在のKindleは、現在のE-Bookに最適化されたものだ。拡張型のE-BookはiPad型のタブレットを必要とし、また単純にダウンロードして読む、という行為から、対話的なインタフェースを通した、ダイナミックでインテリジェントなものが増えていくだろう。コンテンツがアプリ型になることでiPadのような一体型サービス、あるいはBlioのようなUI環境を前面に出したサービスが増えていくことは間違いない。アマゾンが進出しないということは考えられない。現在でもKindleでは使えないiPad専用コンテンツを扱っているほどだ。
結局、市場の変動要因として最大なものは「中国」であろう。この世界第2の“E-Book大国”は、海外進出を含めた国家戦略を固めつつある(本号記事を参照)。そしてここにはKindleも進出できていないのだ。2015年にアマゾンのライバルになるのは、中国企業である可能性は十分にあると思われる。(鎌田、10/14/2010))







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