英国Times紙の有料読者獲得は10万

ペイウォールを築き、コンテンツに課金する新聞・雑誌メディアのビジネスモデルは、2010年の焦点の一つだったが、これに火を点けたニューズ社系メディアの英国での実績が報じられた。The Times/Sunday Timesは10万5,000の有料読者を獲得、別の10万人が印刷版契約に含まれる無料アカウントを活用したとしている。「こうした数字は、多くの人が上質のジャーナリズムのデジタル版を喜んで購入することを明確に示しています。」とニューズ社のレベッカ・ブルックスCEOは宣言した。

ペイウォールはペイするのか

The Timesは、Webのほか、iPad、モバイルで提供している。最初の30日間が£1で、以後1週£2だ。24時間パスが£1なので、かなり強力に定期購読に誘導している。日経新聞に比べるとたいへんに安い(日本の新聞・雑誌が高すぎるのだ)。

さて、有料コンテンツに関する今日のメディアアナリストの常識は次のようなものだ。

  • 一般向けオンラインニュースで十分な購読者を得るのは困難
  • 金融・経済など専門情報源では有料モデルも成立可能
  • 広告と有償という異なるビジネスモデルの共存は紙より難しい
  • 無料読者に対する有料読者の比率は5%程度

Web中心主義をとるライバルのGuardian(が所有するpaidContent=参考記事)の評価は、とにかく手厳しい。10万の購入者のうち、定期購読は半分にすぎないとみているからだ。iPad版読者も、5万人あまりのクロス・プラットフォーム契約者に含まれるものが多数だろう。電子版を購読するのは従来からの愛読者のみ。数100万人がトップページだけを見て去っていく。わずかな購読者を得ることで、つねに「会話の中心に存在すべき」共鳴器としての地位を失っているではないか、とみているわけだ。

Financial TimesのWebサイトは、これまでに189,000人の有料読者を獲得した。従量モデルを採用し、一定数以上の記事を読む読者を定期購読に誘導している。これは日経新聞と同じだ。New York Timesも来年同じ方式で有料に移行しようとしている。問題は、広告収入に結びつくビジターの減少(下のグラフを参照)、そして印刷版の購読減少だ。ニューズ社のThe Times/Sunday Timesは、90%もの減少を覚悟したが、それよりは少なかった。ニールセン社の調査では、3Qの月間ユニークビジター数は42%減となっている。そしてホームページの先に行く読者は少ない。これで果たして利益は上がるのか? ニューズ社は、対象を限定した広告と購読収入で、それは可能であると主張する。しかし、専門家は、サイトの滞留時間などのデータが明らかになっていないので、判断しようがないようだ。

いまひとつの問題は印刷版への影響だ。6~9月でTimesの読者は3%減少し48.7万、日曜版は1%上昇して110万となった。ここにWebの影響があるかどうかは不明だ。しかし50万部を切った中で、電子版の10万は将来に一縷の希望を残す結果と言えるだろう。しかしアナリストは、ニューズ社が支配権を持つペイTVのBritish Sky Broadcasting(契約数1,000万)とバスケットで販売するのではないかとみている。新聞単独の収益はもともとあまり期待できないということか。 (鎌田、11/03/2010)

参考記事

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