米国電子公共図書館(DPLA)構想始動

米国ハーヴァード大学のBerkman Center for Internet and Societyは12月13日、米国電子公共図書館 (Digital Public Library of America, DPLA)設立のための調査と計画立案を同センターが中心になって推進することを発表した。A.P.スローン財団の資金援助を受け、電子公共図書館の目的、構造、コスト、運営などを定めるために、広汎なステークホルダーを招集し、2011年から活動を開始する予定。教育関係者、公共図書館、文化機関、連邦政府と自治体、出版社、著者、民間企業などが招集される。(写真はハーヴァード大学図書館)

電子公共図書館構想(つまり公的機関が保有するオンライン情報資産への一般市民のアクセスの改善)は数年前から提起されていたが、なかなか具体化しなかった。同じく図書館の蔵書の電子化を進めていたGoogleとの関係もあり、また電子化につきものの著作権問題もある。構想は誰でも思いつくが、実現には並々ならぬ覚悟と自信と調整能力が必要という、いわくつきのテーマだからだ。したがって今回、ハーヴァード大学図書館のロバート・ダーントン館長(写真左)を委員長とする運営委員会が、すでに協議を始めている議会図書館、国立公文書館、スミソニアン協会という3つの連邦機関と連携する形で作業を始めるのは、それ自体が大きなニュースと言える。

10月にハーヴァードで開催されたミーティングで、ダーントン氏は「この国の文化遺産を、すべての市民が自由に利用できるようにする」ことを目的に掲げた。しかし、クーラント教授は「一国の文化遺産(cultural patrimony)」というのはあまりに範囲が狭すぎる、と指摘した。他の国の遺産と区別することは無意味であり、それにpatrimonyよりはheritageとするのがベターであるという。歴史学者(18世紀フランス史)のダーントン氏は、この指摘を予想していたかのように、heritageとするに吝かではなく、その場合、合衆国の文化遺産というものが本質的に国際的起源を有することを認識しなければならないと述べている。つまり、DPLAも、多言語のコレクションを含み、世界の研究者に開かれているべきだということである。ブログを使ったこの2人のやりとりは、関係者の間で高く評価されている。

運営委員会には、インターネット・アーカイブを主導してきたブリュースター・カールやピーター・ブラントレーの名前が見えない。これがどのような意味を持つかは不明である。いずれにせよ、米国を代表する知性を集めた委員会でどのような議論が展開されるか、どのようにプロジェクトに落とし込むかは、日本の構想にも大きな影響を与えると思われる。本誌でもできるだけフォローしていきたい。 (12/15/2010)

運営委員会のメンバー

ポール・クーラント(ミシガン大学教授、公共政策論、図書館長)
ロバート・ダーントン(ハーヴァード大学教授、歴史学、図書館長)
チャールス・ヘンリー(図書館および情報資源評議会=CLIR議長)
マイケル・ケラー(スタンフォード大学・学術情報資料室長)
カール・マラマッド(Public.Resource.Org、理事長)
ディアナ・マーカム(議会図書館・図書サービス部次長)
モーラ・マークス(Knowledge Commons会長、バークマン・センター・フェロー)
ジェローム・マッガン(ヴァージニア大学教授)
ドナルド・ウォータース(メロン財団学術コミュニケーション情報技術プログラム担当部長)
ドートン・ウェバー(スローン財団プログラム担当副会長)
幹事:ジョン・パーフレイ(バークマン・センター)、ヘンリー・エス3世(ハーヴァード・ロースクール教授)

参考記事

Berkman Center Announces Digital Public Library Planning Initiative, Press Release, 12/13/2010

A Library Without Walls, By Robert Darnton, New York Review of Books, 10/04/2010

A National Digital Library?, BY Paul Courant, Au Courant Blog, 10/12/2010

One Step Closer to a National Digital Library, 10/06/2010, By Jennifer Howard, Chronicle of Higher Education

National Digital Library Spurs Conversation About ‘Cultural Patrimony’, By Jennifer Howard, Chronicle of Higher Education, 10/15/2010

Print Friendly
Send to Kindle

Share

Trackbacks

  1. […] 米国電子公共図書館(DPLA)構想始動 […]

  2. […] This post was mentioned on Twitter by Toshiyasu Oba, Hiroki Kamata. Hiroki Kamata said: 米国電子公共図書館(DPLA)構想が、ついに実現に向けて動き出した。ハーヴァード大学のバークマン・センターが中心と […]