Google eBookstoreへの7つの疑問

Googleは12月6日、オンライン・ブックマーケットプラットフォーム、Google eBookstoreを米国で正式にオープンした。出版社4,000社が参加、タイトルは300万を数える。つまりこれにはGoogle Books(旧名Google Book Search)も統合されている。去年11月に発表されて注目を集めたが、夏のスタートとはならず、iPad、Kindle 3、B&N Nookなどの影になって年末商戦も逃してしまった。それでもメディアの扱いは大きく、これはアップルに匹敵するGoogle効果といえる。

広告か書店か

利用できる情報源は非常に多く、すべてに目を通す時間はまだない段階で、このインターネットの巨人について要点だけを書くのは「象を撫でる」観があるが、サービスの紹介は他に任せるとして、あえて視点をまとめておきたい。

  1. Googleとは何か、といえば、それはオンライン広告プラットフォームの会社ということになろう。もちろんITのエキスパートでクラウドサービスを展開しているが、収益の大半は広告であり、本質は広告代理店だ。これは他の事業と矛盾する場合が多いので、あらゆる情報を掴み、利用できそうでいて、じつはそううまくいかない。
  2. Googleのビジネスの基本は、消費者を直接相手にしないB2Bで、通販会社のように、クレジットカードの番号も膨大な購買履歴も持っているわけではない。スマートフォンNexus Oneで失敗したのはそのためだった。本を売るのは電話機より難しい。
  3. Googleは本のビジネスを知らない。大海を飲み干すような大胆不敵なアイデアは敬服に値するし、実現性も確かにあるが、アポロ計画並みの非常に精密な設計を必要とすることをやるには、あまりに世間知らずで甘いところがある。
  4. オンラインの世界でコンテンツの数が「最大」とかいうのは、ほとんど意味がない(意味があるのは顧客と売上だけ)。ただ、広告ビジネスの拡張として考えれば、「書籍連動型広告」には大きな可能性がある。
  5. 広告プラットフォームは当面盤石であり、Googleにはまだ失敗のための余力が十分にある。検索連動広告というハイリスクビジネスの配当だが、それでも「失敗」のチャンスは平等である。インターネットの世界では、企業規模の大きさは成功確率には直接リンクしない。
  6. Google eBookstoreは、出版社、書店(およびそれらを含む広告主)、消費者とステークホルダーが入り組んでいる。アマゾンもアップルも(もちろんGoogleも)、成功するものは単純であり、単純化できなければ成功はない。
  7. 本ビジネスでのGoogleの比較優位は、アフィリエイトのネットワークとAnalyticsのデータ、検索エンジンであるが、eBookstoreはまだそれを生かすように徹底できていない。UIデザインは凡庸で、強いはずの検索システムは、本とユーザーのメタデータの深さを感じさせるものではない。

かなり酷評してしまったようだが、これだけのことをやるにしては、Googleの経営陣には石橋を敲くアマゾンと、現実を変えるほどの執念と緻密な構想力を持つアップルに対抗できるキャラクターがない気がする。 (鎌田、12/09/2010)

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Comments

  1. 神宮司です。

    良質な「user experience」を求めて石橋を敲くアマゾン。予想を
    裏切る「user experience」を探して緻密に構想するアップル。そ
    こへ知の流通のためのミッションをあくまで追求するグーグルが、
    ついに電子書籍販売に参入しました。

    ●Google eBooksは販売店や端末に縛られないオープンなサービス、グーグルが説明会
    http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20101207_412351.html
    Googleブックス担当マネージャーの佐藤陽一氏の講演をまとめ
    たもの。http://books.google.com/ebooks  http://books.google.co.jp/

    「user experience」を旗指物にかかげる2つの会社は、それをビ
    ジネスのエッセスと考えるからそこにこだわる。

    この2者と異なるのは、グーグルが非ビジネスの発想から、つまり
    「知の流通」の一点から書籍ビジネスにかかわってきた点。グーグ
    ルの頭からみれば、出版社にコンテンツを提供してもらうのに、書
    籍ビジネスより他にインセンティブに富むものはない、というわけ。

    高邁な理想をいくら言っても、書籍コンテンツがネット世界に出て
    くることはないだろう。

    オープンを原点とするネット世界に、クローズな出版物コンテンツ
    を解放してもらう、パス(経路)として開設されたのがGoogleの
    eBookなんですね。

    ですから、前2者と比較して使い勝手が悪いみたいな批判は、ひょ
    っとすると的はずれかもしれません。そのかわり、検索エンジン
    をキーにした「知の流通」機能だけは、2者に比肩するはずです。

    ●GoogleのeBookをiPadで読んでみた
    http://jp.techcrunch.com/archives/20101206google-ebook-ipad/
    TechCrunchの記事で、いいところわるいところを丁寧に、淡々
    と記述している。

    本を買う者としての過大な期待は禁物で、コンテンツを活用する者
    として、グーグルの参入を喜ぶべきなのでしょう。

  2. 来年にはCSS3が正式採用となる予定です。
    そうなると2011年5月に仕様が公開されるEPUB3.0の日本語仕様が、略
    はっきりしてきます。
    世界中の出版社から日本向けの縦書きルビ付きの書籍が発刊される可能性もあります。
    ちょっと楽しみですね。

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  1. […] This post was mentioned on Twitter by emuty, Hiroki Kamata. Hiroki Kamata said: 「Google eBookstoreへの7つの疑問」というのを書いた。インターネットビジネスは、横への展開は誰でもできる。縦の深さ(抽象 […]