2012年1月26日

教科書市場再編目指すアップルEテキストのビジネスモデル

By: EDITOR

アップルの出版戦略の要ともいえるiBook Author (iBA)の持つ多様なコンテクストについては前号でまとめたが、主要なターゲットである電子教科書の市場での成功は、基本的にマグロウヒルやピアソンのような既存出版社とのパートナーシップにかかっている。先週のイベントでは、一律14.99で販売するプランが発表された。これにはマグロウヒルが参加することになっている。そこにはどんなビジネスモデルと収益構造が考えられるだろうか。

アップルのプランでは、電子教科書は学生に(直接あるいは教育機関を通して)15ドルで、1年間の期限付で提供される。1冊買った学生が別の教科書を購入する可能性はかなり高い。これまでにも学生は(不況にもかかわらず)かなりの経済的負担に耐えてきたので、受忍限度までは買うだろう。米国の学生は、とにかく大量のテキストを読む。マグロウヒルのような出版社は、75ドルの紙の教科書と15ドルの電子教科書が釣り合うと考えているが、それはボリュームが5倍以上になり、利益率も向上すると考えているからだ。

アップルの手数料が、通常の30%なのか、それともそれ以上/以下となるかは見えていない。15ドルの30%の4.5ドルとすると、出版社の売上は10.5ドル。75ドルを超えるには7.2冊必要だが、もともと75ドルの本の市場は限られていたので、出版社は5倍以上は売れると考えているのだろう。そして利益率は紙の数倍になる。マグロウヒルは15ドルという価格をテストケースと考えているが、アップルはそれ以上を考えるつもりはないようだ。

iPadは高額なので、一般的には高校生よりも大学生が主要なターゲットとなるはずだ。しかし大学市場では出版社が独自のチャネルを持っているので、当面は高校生から始めざるを得ない。15ドルプランは、高校からカレッジレベルをターゲットにしている。500ドルのiPadは敷居が高いが、市場の規模を決定するのは、教科書コストを含めた教育費用としてみた学生側のコストメリットだ。Eテキストが安く提供できれば、教育費用には影響せず、逆にお釣りがくる。そして出版社も量販が可能になる。これまで高等教育用教科書はかなり高額で、大学生の印刷本は100ドル前後もしていたので、古書やレンタルも含めた流通システムも成立していた(最大手はB&N)。アップルの戦略はこれらを含めた再編を狙っている。

日本の教科書市場は義務教育レベルが中心だが、2年制のコミュニティ・カレッジを含めた大学生が1700万人を超え、平均レベルの大学では学生一人当たり年1,000ドル以上を教科書に使う米国では、大学教科書は独立した存在感を持っている。また、カレッジレベルでは高校教科書、学部レベルでは専門書の市場ともリンクしている。エルセビアやシュプリンガーなど欧州系の大出版社も含めて、出版社は世界市場に展開しており、米国はその中での最大市場、中国とインドは最大の成長市場となっている。  (鎌田、01/26/2012)

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1件のコメント on "教科書市場再編目指すアップルEテキストのビジネスモデル"
  1. Comment left on:
    2012年1月27日 at 8:31 AM
    小笠原治 says:

    教科書と教育をごっちゃにしてはいけない。むしろ曖昧にして幻想の中でビジネスしようというのがAppleではないか。つまり学生の立場で考えると、タブレットを使ってより良いレポートや論文が書けるようになるのかどうか、というところまで考えないと、教科書を売りつけてオシマイという話になってしまう。

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