Googleはなぜ書店との提携を止めたか? (♥)

Google eBooksは、書店との協力を謳い、2010年末から米国書店協会(ABA)とのパートナーシップによる独立系書店向けプログラムIndieCommerceを推進してきたが、4月6日これを2013年1月31日で終了することを表明した。販売促進につながらなかったので、Google Playストアに集中することを理由としているが、そもそも同社の姿勢に問題があったとする見方が強い。アマゾンの対抗馬として出版業界が期待して始まったサービスがなぜ消えるのか。Googleは本来何をすべきだったのかを考えてみたい。 [全文=会員]

GoogleはE-Bookでは本気にならなかった

ABAのオーレン・タイチャー会長(CEO)は、この決定に「たいへん失望した」と述べたが、予期していなかったわけではなく、現在のIndieCommerceを継続させ、さらに改善していく体制に早期に移行する自信を表明した。これはそうあるべきものだ。パートナーがいかなる大企業であろうと、プラットフォームは永遠ではないどころか、1年以上先のことは読めない。

Googleの書店向けプログラムは、米国、カナダ、英国、フランスおよびオーストラリアで提供されている。書店と協力する同社のE-Book戦略の支柱となるはずだった。もちろん、これは実験的な試みであって、うまくいかなければ中止するというのは理解できるのだが、果たしてやるべきことをやったと言えるだろうか。とくに、本のエコシステムの中で重要な役割を果たしている独立系(大手チェーン以外の)書店をパートナーとする新しいビジネスモデルを提示したはずが、たんなるアフィリエイト・プログラムのように扱った印象は否めない。オライリーのジョー・ワイカート氏は、あり余る資金を持ちながら、なぜGoogle eBooksのために投入しなかったのかと疑問を呈している。

Googleもアマゾン同様、「すべてのプラットフォーム」をサポートしている。しかしKindleを除いて。米国では最もポピュラーなデバイスであるKindleで読めないというのは大きなハンデだ。Kindleで読めるようにするのは不可能ではない。DRMなしのMobiファイルを提供すればよく、オライリーは自社出版物についてすでにやっている。大手出版社に対し、現実にはアマゾンが彼らとその読者をコントロールする手段となっているDRMを外すことを提案し、そして違法コピーについてはGoogleが補償するようにすればよい、とワイカート氏は説くのである。DRMは違法コピー対策としては無用な存在だ。

プラットフォームの主宰者として必要な努力を怠る

ワイカート氏は、そもそもGoogleがE-Book市場をどれほど重視していたのかは疑問だとしている。たんにアップルとの対抗上含めただけという可能性もある。しかし、Google Booksに数百億円を投じたことを考えれば、Googleが本の戦略的価値を重視していたことまで疑う必要はないだろう。アマゾンが本を軸に通販商品と顧客を巧みに拡大させていったように、本のカテゴリーを軸にユーザー・コンテクストを発見するアルゴリズムを開発していることは当然だが、それが期待に外れて機能していない可能性が強い。アマゾンがサプライチェーンのすべてをカバーするのに対して、Googleは商品/サービスの検索時点にフォーカスしている点で、アルゴリズムの可能性には制約がある。デジタルコンテンツの販売では、Googleがサプライチェーンのすべてに関わることができるが、顧客ベースの差とともに、デバイスからケーブルまで扱ってきたアマゾンとの関係では不利は否めない。

独立系書店との関係は、紙の本でも最大手であるアマゾンとの対抗上もきわめて重要であった。しかし、この関係を創造的なものとするには、マーケティング情報の共有基盤、柔軟な決済プラットフォームなど、エコシステムの主宰者としてのイニシアティブが必要となる。アマゾンが憎まれながらも地位を保っていられるのは、その情報力に出版社が依存しているからだ。Googleはそのための努力を払わなかった。アップルはデバイスのデザインという武器があるが、資金力と検索エンジン、Androidだけではアマゾンに立ち向かうことは出来ないことを再び証明したといえよう。Googleのストアは、本を総合的な品揃えの一部とはしながらも、E-Book市場で重要な存在となることはないだろう。  (鎌田、04/11/2012)

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