コピーショップをアウトレット書店に変える

ニューヨークで先週開催されたTOC (Tools of Change)カンファレンスで、出版関連のベンチャー企業に発表の機会を提供する Publishing Startup Showcaseというプレゼンとコンペが行われ、10社の優秀企業が表彰されたが、アントレプレナー賞を獲得したのは南アフリカ共和国から参加した Paperright(ペーパーライト、ケープタウン)という会社だった。まったく派手さはないが、ユーザーと環境に最適化したソーシャル・アントレプレナーのビジネスモデルは別な可能性を感じさせる。

ペーパーライトのビジネスは、技術的には驚くことはないが、いわゆる適正/中間技術 (Appropriate technology)の一つとして評価されたものとみられる。途上国にE-Reader/E-Bookを提供するプロジェクトもあるが、学校以外では実用できないのが難点だ。この会社は学校でも書店でもなく、コピーショップに目をつけた。

創業者のアーサー・アトウェル氏によれば、南アは約5,000万の人口のうち、出版市場は(教科書を除き)ほぼ200万人の富裕層で占められ、残りの4,800万人はE-Readerを持たず、オンライン購入に必要なクレジットカードもなく、本屋に行く余裕もない。人々が本を読む機会を得るには、従来の考え方を変える必要があった、という。途上国の多くがそうであるように、書店はなくても、歩ける場所にコピーショップはあるので、彼はオンデマンドのアウトレットとして機能させることを考えた。店を歩いて現在までに145の店と契約を交わしたがこれが「書店」となる。

ペーパーライトのショップは、コンピュータに特定の書籍リストとコンテンツの在庫を持っており、来店者は店で支払いを済ませてコピーを受け取る。本は安いので、出版社とペーパーライトの双方が利益を出すようにするのは簡単ではないと思われるが、独自の方法で解決したという。多穴パンチバインダーの簡易製本で、背糊を使わない仕上がりは本というよりオフィス文書に近いが、テクノロジーというものは役に立てばよい。南アの人口の65%はインターネットへのアクセスを持たず、したがってE-Bookも利用できないが、コピーショップをPODファクトリとすることで、間接的に出版のサプライチェーンにアクセスすることができる。

印刷・製本を行うショップが売上の63%、ペーパーライトは7.4%で、出版社は29.6%を確保している。出版社に3割のマージンを確保していることが重要で、ショップのコストダウンが可能になれば軌道に乗るものと思われる。説明によれば、これまで約40の出版社がペーパーライトに1,500点あまりのコンテンツを提供している。同社はガーナにもアウトレットを持っているが、サハラ以南のアフリカ大陸、次いでアフリカ全域に拡大する計画だ。 (鎌田、02/21/2013)

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