電子図書館プラットフォームOverDriveが日本へ

mediado_logo_mE-Book取次のメディアドゥと電子図書館プラットフォーム大手の OverDriveは5月12日、日本国内でのサービス展開および相互のコンテンツの流通を含む戦略的業務提携を発表した(→リリース=))。伝統的にローカルな存在だった図書館は、デジタル・プラットフォームのグローバル化によって新しい役割/可能性が生まれてきた。

図書館/サービスの国際化と日本語コンテンツ配信

今回の提携のポイントは3点。

  1. 日本国内における電子図書館サービス事業:OverDrive Japanを設立し、定評あるODの多言語プラットフォームを日本語対応に拡張、公共、大学、学校、政府・官庁、企業等に提供。
  2. ODの多国語言語コンテンツの国内配信:世界5,000以上の出版社から提供されている100万タイトル以上のコンテンツを国内ユーザーに提供する。
  3. ODを通じた国内コンテンツの海外配信:36ヵ国、52言語、28,000のサイトに対して配信しているODのグローバル・プラットフォームに国内コンテンツを提供する。MDはこれまでに200社、9,000タイトルあまりを確保したとしている。

以上の事業スケジュールは発表されていない。

OverDrive_screen学術的なものを除けば図書館はローカルなもので、自治体を主体とした公共インフラの一つなので、OverDriveのような配信プラットフォーム、コンテンツベースの国際展開という発想は皆無だったように思われる。昨年の東京国際ブックフェアでは、KADOKAWAの角川歴彦会長が、講談社、紀伊國屋書店と共同で図書館向けの電子書籍貸出サービスをプロジェクト化することを明らかにしたが、「スピード感を持って挑戦」と述べたわりには、その後の進展は聞こえてこない。おそらく関係者にこうしたプロジェクトの経験が皆無で、事業やシステムの輪郭が描きにくく、予算化もしにくいと推察される。数年がかりでリスクの大きいプロジェクトよりOverDriveとの提携を選択したメディアドゥの判断は合理的なものだ。

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新しい文化交流のプラットフォームへの期待

OverDrive Japan は、以下の3点で注目に値する。
第1に「図書館システムの国際化」。図書館プラットフォームの開発には数十億円あまりのコストを要する。システムの維持管理も簡単ではない。市場が小さいと償却できないので、システムは汎用であるほうがいい。汎用システムは世界市場を目指す。どう考えても、日本は米国のシステムの市場になるしかないだろう。日本のベンダーがODJと対抗するには、公費を注ぎ込むのでもなければ、米国のベンダーと提携するしかない。

第2に「日本語コンテンツの海外普及」。日本語あるいは翻訳市場を開発するには、(海賊に頼るのでなければ)利用者の負担のない図書館を使うのが最も有効だ。誰かが翻訳をし、外国出版社が版権を入手し、たまたまヒットする可能性は、限りなく小さい。ODのネットワークは、もし有効に利用されれば、最も有力なチャネルの一つになるだろう。それによって、日本語コンテンツの海外市場が生まれる。しかし、機能するためにはキュレーターが不可欠で、市場の開発は簡単ではない。例えば「ベストセラー」を扱うといっても、海外ではマンガと書籍は区別されているし、書籍のジャンル区分も異なる。

第3に「海外コンテンツの流通」。これまで、外国の一般図書にアクセスできる機会は非常に限られていた。返本なしで輸入される輸入書籍は禁止的価格であり、洋書購買層がアマゾンに狂喜した理由でもある。洋書を扱う日本の図書館がどのくらい現れるかは疑問もあるが、例えばアメリカン・センターやブリティッシュ・カウンシル、各国大使館などが自国コンテンツの紹介に利用すれば、一般市民が容易に利用できるようになる(個人的にも大いに期待している)。

1986年創業の OverDriveオハイオ州クリーブランド)は同分野の世界的リーダーで、28,000以上の図書館、学校、書店と取引があり、iOS、Android、Kindle(米国のみ)を含むデバイスをサポートし、EPUB/HTML5ベースでE-Book、オーディオブック、ビデオの配信を行っている。同業ではほかに、3M、イングラム、EBSCO、ベイカー&テイラーがある。

メディアドゥ(MediaDo、東証マザーズ上場:3678)は1999年に創業し、ケータイ以来モバイルコンテンツの流通(配信/小売)を行っているが、2006年にE-Bookに参入し。現在では200以上の出版社のデジタルコンテンツを扱っている。2014年2月期の実績で、電書事業の売上は8割以上を占め46億2,600万円(前年比151.6%)。(鎌田、05/15/2014)

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