日本市場の展開を読む

turning point21月からスタートする年間購読会員版「E-Book 2.0 ビジネスレポート」を特別公開記事としてお届けします。「日本市場の現状を読む」とペアになる分析で、コミックの優位と書籍の停滞という「アンバランスのバランス」が崩れる可能性を考えいています。今後も継続してウォッチする視点を提供しています。この機会に年間購読をぜひお勧めします。[特別公開記事2]

グローバリゼーションは不可避である

1. コミックはデジタルへの重心移行で成長へ

コミックのエコシステムは、紙雑誌→紙本→電書というサイクルがあったが、最近になるまで紙の売れ筋は電子化されなかった(デジタルは「二番搾り」)。そうした中で、デジタルは傍流から主流へ拡大してきたわけである。25%という数字はひとつの転換点となるだろう。この業界にとっての問題は、起点となる紙雑誌が細ってきていることで、書店の減少がそれに拍車をかけている。もちろん打開策はデジタルしかない。

freemanga_roto_300x120._V333550539_デジタルは原因ではなく結果であることをはっきりさせておきたいが、いずれにせよ、電雑誌→電書/紙本というデジタル中心のサイクルが出来てしまう。新人のデジタル・デビューも当然になるだろう。デジタルは終点でなく起点になれば、新人は自主出版デビューすることで版元と交渉力を持とうとするだろう。出版社は好まないだろうが、クリエイターが経済的に豊かになればブームも期待できる。それに、出版社は電雑誌を紙のレプリカではなく、より対話的なメディアとして発展させる動機を持つ。デジタルは日本のマンガ史にとっても転換点となる可能性がある。

市場の規模とグローバル・コンテンツとしての魅力から、日本のコミックがデジタル化する過程でグローバルなものと統合するのは不可避だろう。アマゾンはそのためのインフラを構築しつつある。それはコミック(グラフィック・ノベル)だけでなく、フィクションや映画・TV、ゲームもカバーするものであり、日本の出版社や制作会社とは協力と競争という両面で関わる。

2. 書籍はシステム転換かゼロスタートか

cats-reading-books-L-O4uoP7書籍のほうはまだ先が見えない。出版社は依然として書店への影響を懸念し、E-Bookの可能性を制約している。コミックについては紙と電子の相関はない(つまりカニバリは神話に過ぎない)ことが証明された。書籍以上に紙に依存しているコミックに比べて、カニバリの可能性はさらに低い。にもかかわらず出版社の姿勢にさして変化が見られないのは、

  • 読者との距離が遠く、書店を通じるほかに市場を知ることがなかった
  • デジタルの低価格が紙を滅ぼすという妄想が信念になっている

といったことのほかに、

  • これまでの経緯から紙→電書という非効率なプロセスを変えられない

ということがあると思われる。出版社の編集者は月1冊以上という、驚異的なハイペースで「生産」している。こうした状態ではプロセスの変更は困難だ。多くの出版社はページ組版以後の工程を外部に発注しており、デジタル・ファーストに転換することは、デジタル制作部門を新設し、印刷発注のプロセスを変えることを意味する。そして、それは制作だけにとどまらず、コンテンツ管理からマーケティングにも及ぶ。デジタルの可能性を全開し、果実を享受するためにはこれらは避けて通れないのだが、それだけに安直で高コストな「電書」制作で足踏みしている状態が続いている。

デジタル転換において最も有効で現実的な方法は、まず新(デジタルファースト)ブランドを立ち上げ、ゼロベースでプロセスを構築し、その意義を実証することである。その成果をどう他部門に拡散するか、あるいは新ブランドのもとで業務を拡張するかは次の問題で、いくつかの選択肢があるだろう。

strategy-design新ブランドは、大手出版社のものである必要はないし、日本企業によるものである必要はない。日本の出版市場の閉鎖性・硬直性は、印刷出版物の取次(委託販売制)、および大手2社による寡占によって維持されてきたが、印刷物を不動の中心としなければ無視することが出来るからである。(1)デジタル化の進展、(2)書店流通の衰退、(3)出版社の事業撤退、は不可逆的に進行しており、大手出版社あるいは外部の第三者、あるいは合弁による新ブランドの登場は時間の問題である。重要なことは、デジタル制作およびマーケティングの能力を有した出版社が生まれ、長期的にはそれらに置き換わるということだ。 (鎌田、01/13/2015)

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