大手出版社はデジタル戦線で後退 (2)

AuthorEarningsAERは、アマゾンのベストセラーランキングと、クラウドソースの著者別販売部数データ(数十名分)との関係から販売部数と販売金額を推定するという手法を用いている。出版社刊行本、ISBN登録本にはAAPやニールセンの統計があるが、ISBNを取得しない本がかなりの数になる自主出版は統計では捕捉できないからだ。

出版界の虚構とKindleの販売額が明るみに

アルゴリズムによる計算は、サンプルの質が信頼性を左右し、絶えず検証して例外的なものを排除していかなければならない。統計専門家がいないと無理なものだ。その上で、時を経ないと精度を評価できない。AER16-02では、そのあたりに触れているが、データを扱う姿勢はプロフェッショナルなものだ。2016年版では新しい方法論を用いてさらに部数/順位変換の精度を高めた。アマゾンのランキングは単純な実数ランクではなく、時間による減衰を算入して調整したもので、従来の販売の絶対数の推定ではKindleでの販売部数は最大18%過大に推定していた可能性があったとしている。しかし、AERはパイチャートによる相対比の計測にフォーカスしており、それらの結果には絶対の自信を持っていると言う(誤差1%以下)。

点数シェア:E-Bookの半分は自主出版系

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今年最初のデータは、1月10日の上位195,000点(フィクションおよびノン・フィクション販売総数の58%)を対象としている。タイトル数のシェアは昨年9月のデータとほぼ同じ。顕著な傾向は、ベストセラー上位でのインディーズのシェアの増加で、総合上位10点中4点、20点中10点、100点中56点(うち20点は価格が3-6ドル)となっている。ジャンルはかなり幅広い。

部数シェア:販売部数でも自主出版系が半分

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販売部数のシェアは、自主出版系(インディーズ+著者出版者)が47%、B5が23%、中小出版社が19%、アマゾンが11%となっている。自主出版系は半分に近く、アマゾンを含めた出版社系と拮抗している(この数字にはKindle Unlimitedによる貸出収入は含まれていない)。これらのうち、在来の出版社のシェアは45%、AAPの統計にカウントされるのは29%以下と推定されている。43%がISBNで紐づけられていないので、 BowkerやNielsenの統計から漏れている、とAERは指摘している。半分しか捕捉していないものを市場統計とは言えない。AERは伝統的な出版業界の虚構をも暴いたことになる。

金額シェア:アマゾンの売上は1日575万ドル、年間21億ドル

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金額シェアでは、B5が40%、自主出版系が4分の1で、部数シェアを裏返したような関係になっている。価格が高い分、B5の売上は相対的に大きいが、皮肉にもそれによってB5はアマゾンに最も多く(30%)を報いていることになる。ランキングと部数の関係を数学的に突き詰めてきたAERは、パイそのもの(アマゾンでの売上金額)の大きさまで突き止めたようだ。なんと、これまで誰もなし得なかった、Kindleストアの書籍売上に肉薄したのだ。これは快挙と言ってよく、クラウドソースが市場の真実を明らかにした事例として称えられるだろう。

1月の1日の売上部数は106万4,000点。うち15.5万部(14%)はKindle Unlimitedのページ・カウントを冊数換算したもの。残りの90.9万部がストア販売によるものだ。そしてアマゾンは今年1月に、1日当たり約575万5,000ドルを売上げた。年間で21億ドル。そのうち10億ドルは出版者統計(AAP)に含まれていないものだ。

著者実収シェア:著者収入の半分は自主出版から

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今回のAERのハイライトは、さらに精度を上げた著者の実収ということになる。Kindleは1日175万ドルの実収を著者にもたらした。自主出版系は47%と半分近く、在来出版社(43%)を上回った。アマゾン出版も10%を占めており、B5の平均レベルを大きく上回っている。B5は23%と、E-Bookに関する限り頼りにならないことになる。既成の出版業界メディアや作家団体が主張している、E-Book販売の下落、著者の収入の縮小の実体はこれだ、とAERは主張する。「私たちはただ、こうした団体の方々がまったく見当違いのところを見ているとだけ申し述べておきたい。」

「出版ビジネスはなお急速に変化しており、この先長期的にどうなるかは誰にも予測できない。私たちには、2015年にデジタルのボールをコートの外に放り投げて家に帰ってしまった観のある最大手の在来出版社がそのままでいるとは思えない。しかし、有害な価格決定が著者の収入をふいにすることを著者が拱手傍観することだけは確実にない。」

AERはこれまでE-Bookだけを対象としてきた。アルゴリズムによる推計の精度が上がったことで、印刷本やオーディオブックにも拡大してほしい、とは誰しも考えるだろう。どちらも既存の統計の限界が露呈しているからだ。そしてついにAERは著者にとって関心がある、これらをフォローし始めた。次号をご期待いただきたい。  (鎌田、02/12/2016)

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