2020年の出版ビジネス(1):PwCの新予想

PwC_logoプライスウォーターハウス・クーパーズ(PwC)社の出版産業レポートは、2016年にE-Bookが印刷本を上回ると予測したことで知られる。最新版では、今後数年間、E-Bookが漸増、印刷本が漸減という大人しい結論だ。しかし、変化がないわけではない。実用・教育系のデジタル化は急速に進み出版ビジネスの様相を変えるとみている。

低成長下の激動:実用中心の再構成

PwC2016年版によれば、今後5年間(2020年まで)の書籍出版の年平均成長率は1.7%で、教育系が1.9%、市場の半分を占める一般書は1.5%に留まり、ベストセラーに左右される。この僅かなプラス成長を推進するのはE-Bookで、とくに専門書・実用書ではデジタル中心になり、11.7%という高い年平均成長率で印刷本の減少(-2.8%)をカバーする。

Book-publishing-2

書籍出版の中期的な成長が実用・教育系出版物によって実現される、という見方は理解できる。こちらは時代が必要とする知識・技能のコミュニケーションに関するものであり、より効果的、効率的な技術を採用し、付加価値を高め、広告を中心とした多様なビジネスモデルを通して実現されるだろう。世界最大の出版社であるピアソン社はデジタル=グローバルに容易に馴染まない商業出版や新聞(FT)を売却し、教育系に転換した。同社からペンギン社を完全取得したベルテルスマンは世界最大の商業出版社だが、いまだ地道な買収意外に成長戦略は見えない。

Book-publishing-1

娯楽・教養市場は、他のメディアとの競争と融合を経験して、静的情報を冊子化した伝統的コンテンツと、ディズニーのように動的情報を組合せた顧客志向のサービスに分化していくが、前者が商品として衰退を免れるのは難しいと思われる。PwCのフラットな市場予想は、安定あるいは停滞を意味するものとは思えない。衰退産業のM&Aとリストラは厳しい。

メディアの衰退は、いつまでも時間をかけて進行するものではない。メディアは社会的コミュニケーションの中にあり、維持可能なレベルを割れば急速に崩壊がくる。明治20年までに和本出版が消滅し、金属活字と動力機械の出版に移行した時には、実用書・啓蒙書が先行した。娯楽系コンテンツの不足を埋めたのは、講談や落語などの身体的メディアから文字変換したものだった。印刷本の崩壊は、採算性という単純な原理によって、サプライチェーンの連鎖的な衰退が進むことによっておこる。印刷本の愛好家は、まともな新刊が激減する前に買い集めておいた方がいいだろう。 (鎌田、06/21/2016)

Print Friendly
Send to Kindle

Share

Trackbacks

  1. […] ● 2020年の出版ビジネス(1):PwCの新予想 http://www.ebook2forum.com/members/2016/06/pwc-projection-of-publishing-industry-toward-year-2020-1/ 明治20年までに和本出版が消滅し、金属活字と動力機械の出版に移行し […]