出版社の戦略的失敗の証明

pitfall米国出版社協会(AAP)は、出版統計サービスStatShotの3月分および2016年第1四半期の数字を発表した。ともに-3.0%、-2.7%と低迷しており、大出版社の年央までの業績と重なっている。四半期では、商業出版が7%、E-Bookは21.8%の減少となった。本誌の仮説が正しければ、これは出版ではなく、大出版社の凋落を意味する。

紙も、デジタルも落ち込む

AAP.Logo_.Color280x150AAPの数字は、会員企業1,200社の卸販売額を集計したもので、2010年頃までは商業出版市場の80%をカバーすると言われてきた。現在の推定はない。ようするに、これは有力な商業出版社の販売動向を示すもので、一つの定点観測データでしかない。注目すべきは前年比と中期傾向、分野別動向だ。そして最近は発表が遅れるのが常態化し、月次の数字が半年遅れとなった。数字万能の国で、1Qの発表が3Qになるのは異常だ。発表したくなかったのだとしか思えない。しかし、これによってハイシーズンのパフォーマンスが注目されることになる。

3%減21.4億ドルと発表された四半期統計には、教材や実務出版物、研究書などが含まれている(構成比約36%)。一般書は7.4%の減少で、とくに大人向けフィクションが10.3%と二桁落ち込んで10億ドルを割った。青少年向けは2.1%減。フォーマット別では、ペーパーバックがー6.1%、ハードバックが-8.5%、E-Bookがー21.8%と活字が全滅。A-Bookのみ35.3%増と伸びた。実務系も同様に落込み、結局全体の落込みを緩和したのは、官公需の教科書のみ。なお、量販本(MMPP)とディスク・オーディオは30%前後の激減を示しており、消滅は遠くないだろう。

デジタルの不振がアマゾンを苦しめることを期待!?

bookstore今回のAPAの数字は、ビッグファイブの半期の数字をなぞったようなもので、新しい発見はないが、商業出版社に売上を牽引する話題のベストセラーが皆無で、その空隙を自主出版本が埋めるということになる。Talking New MediaのD.B.ヘバード氏は、「大出版社は、デジタルの不振がアマゾンを苦しめることを期待しているのか?」と書いた(9/18)。「彼らは印刷本の売上を上げようと絶望的な努力をしている。なぜなら、そこでは彼らが王者だから。本の大部分が印刷本なら、アマゾンその他の脅威が遠ざかるだろうと期待しているのだろう。」

大出版社のE-Bookが売れないのは、単純に高いからだ。そこまでは分かっていた。分からなかったのは、消費者が5ドルの自主出版本に目を向けること、そしてE-Bookの定価を押しつけられたアマゾンが印刷本を赤字価格で売ることだった。それによって、E-Bookで読者を確保したい中堅・新人作家が自主出版に流出したことは言うまでもない。

このサイクルを続けていけば、いや、いかに大出版社でも勝ち目がないことは明らかだ。筆者も1年以上前から予想した。それでもAAPのリリースは、A-Bookの上昇(33.1%)とE-Bookの下落(-21.4%)を対比させて、デジタル活字メディアの不振を当然視している。よくよくデジタルが嫌いなものとみえる。大出版社は「デジタル」を敵に回した。さながら、機関銃や戦車を敵に回して兵士を無駄に死なせた将軍たちを見ているようだ。Author Earningsのヒュー・ハウィ氏は、遠からず大手がアマゾンと和解して、自分たちの本を優先的に売ってもらうことを考えるだろうと予測する。かつて「安売り戦争を挑んだ)B&Nと和解したように。その可能性は高い。しかし、成功の可能性は低く、犠牲は大きいだろう。 (鎌田、09/21/2016)

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