マンガのデジタル化と出版流通の運命 (1)

manga2日本の出版市場のデジタル化は、マンガが先行しており、もっぱらマンガだけで急成長している。理由は、出版社にとってそれが「火急」であり、一般書籍はそうでもないと考えられているからだろう。しかし、紙の流通は雑誌+マンガで支えられてきており、これは紙の流通にとって苦しいはずだ。

雑誌とコミックは日本の出版の柱だった

freemanga_roto_300x120._V333550539_日本の出版市場の特殊性として、雑誌、コミックとの関係がある。主要出版社が両方を発行し、それを前提として書店流通システムが構築されたことは、出版関係者は知っているが、外国人には理解しにくい。書籍と雑誌は、本来ビジネスモデルを異にし、さらにコミックは市場を異にすると考えるからだ。しかし、雑誌とコミックは日本の出版の柱であり、それなしでは書店流通は成り立たないと考えられている。雑誌とマンガを当てにして書籍を売ってきたところは多い。

恒例のインプレスの『電子書籍ビジネス調査報告書2016』(7月28日発行)によれば、2015年(度)の電書市場は1,584億円で、前年比25.1%増。これは「紙の1割から、全体の1割」に近づいていることになる。しかし、そのうちのコミックは1,277億円、24.7%増で、シェアの8割を占める。300億円足らずでいっかな動かない「書籍」とは比較にならない。だから、日本の電書市場は成長した印象を与えていないし、「ガジェット好きな日本の消費者でも紙の本を愛している」という話が海外にも伝わったりするほどだ。しかし、これは日本のデジタルの一側面でしかない。

「書籍」はマンガなき書店を支えられるか(その逆は)

indian_transportいま出版流通の基幹商品で、デジタル化が急進展している。雑誌を含むコミック市場が3,500億円規模とすれば、すでにコミックのデジタル比率は30%に近い勘定になる。出版流通において、このことの意味は大きい。マンガにおけるデジタルの増加と紙の減少の相関、あるいは両者の比率は別に調べてみたいと思うが、少なくとも年25%もの増加が、書店でのマンガ売上(あるいは書店そのもの)の減少と結びついている可能性は強い。デジタルの利益率は紙とは比較にならないくらい大きいので、この基幹商品のデジタル化は、出版社にとっては貴重な収益源となっているはずだ。

逆に、売上、利益にも貢献の少ない単行本の電書は、書店に配慮して、紙と違わない価格で販売されるか、デジタル化されないで放置される。マンガをアマゾンで売る出版社はなんとかデジタルで息がつけるが、もっぱらカタめの本を売る出版社は、書店の衰退のなかでも、律儀に「再販制」を守り、高い電書を販売してきた。じたばたせずに、香でも聞きながら従容と最後の日を迎えるつもりかと考えてしまう。 (鎌田、09/08/2016) つづく

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