印刷本チャネルに浸透する自主出版

self_pub_print-280x150ISBNの米国発行機関であるバウカー社(Bowker=ProQuestグループ)は9月7日、2010年から2015年までの自主出版の動向をまとめたレポートを発行し、印刷本とE-Bookを合わせ、6年間のタイトル数が72.7万点375.3%となったことを明らかにした。2014-15年も21.2%の成長を示している。

アマゾンCreateSpaceは自主出版支援で圧倒的シェア

bowker_self16バウカー社のデータは、もちろんISBN取得数をベースにしており、それ以外のものをカウントしていない(ISBN取得率は半数を切るとみられる)。しかし、自主出版支援サービスごとのISBN点数を比較できるメリットがある。印刷とE-Bookの両方を選択する著者の場合は、ISBNの取得率が相対的に高いと考えられる。ただし、Kindleベストセラーでは非ISBNタイトルも目立ってきているので、ISBNがなんらかの「ブランド性」を持っているわけではない。

サービスごとの新刊タイトル数のデータを見て驚くのは、アマゾン傘下のCreateSpaceが10倍を超す成長を記録し、40万点を超えるCreateSpaceは直線的な成長カーブを描いているているのに対して、Smashwordsその他の競合が2012年以降、低成長あるいは一進一退を続けていることだ。CreateSpaceは、アマゾンにとって、印刷本の制作・納品のサポートと、入稿・管理の連携をよくするためにあると思われるが、ISBNベースの統計でも圧倒的なシェアを占めるところに、アマゾンのサービス/ビジネスモデルの徹底性が感じられる。

blurb_logo2フォーマット別でも全体の傾向はあまり変わらず、印刷本は2010年比402.5%の57.4万点。CreateSpaceは、ここでも10倍増で42.4万点を出版している。躍進が著しいのは、Luluに次ぐ3位となったサンフランシスコのスタートアップ Blurbで、高品質のデザイン/印刷サービスを組合せたところが評価され、14-15年はほぼ2倍の成長を記録した。3万点を「刊行」するということは、月に3,000点あまりを処理する体制を構築したということで、筆者にも信じられないほどだ(同一コンテンツが複数のISBNを持つことに注意)。アマゾンCreateSpaceに対抗するサービスは可能であることを示した点でとくに価値がある。

「ISBN市場」は紙が中心

Buy_ISBNISBNベースの市場では、E-Bookは15.3万点と紙の4分の1ほどに過ぎない。これはE-Bookだけを出版する場合にはISBNの有効性が低いためと思われる。アマゾンCreateSpaceも、ここでは存在しないに等しい。E-Bookサービスへの需要が減少していることを反映して、10-15年の市場規模が3倍であるのに対して、14-15年の成長は11.2%のマイナスを記録した。この傾向が続くことは、バウカーにとっても懸念すべきことだ。収入の減少と同時に、ISBNはデジタルに弱い、という評価が定着するからだ。

バウカーの自主出版レポートは、2015年の傾向として、以下のように要約している。

  • 読者層やジャンルなどに応じて(もちろん選択可能な場合には)在来出版と自主出版を使い分ける著者が増えている。
  • 図書館や書店が自主出版コンテンツを提供することに前向きになってきた。
  • 自主出版作品で有力なベストセラー・リストの上位にランクされる著者が増えた。

このレポートでは自主出版タイトルの売上の相対比を示していないが、Author Earningsの今年1月の推計(Kindleベース)によれば、E-Bookの部数ベースで自主出版系が半分を超えている。ビッグファイブは20%台、在来出版全体でも40%あまりである。これは5月の推計でも追認されており、質はともかく、量的には、自主出版が在来出版を上回る傾向は定着しつつある。

以上を合わせてみれば、E-Bookで出発した自主出版が、読書市場に定着するにつれて、印刷本制作の体制を整え、書店チャネルに進出しているということが言えるだろう。ISBNに絞ったバウカー社のレポートは、すでに自主出版が、E-Bookを無視しがちな大手出版社にとっても重大な脅威を与えていることを示している。 (鎌田、09/20/2016)

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