大出版社・大書店時代の終わり

target-failビッグ・ファイブの戦略的失敗が露呈したことで、出版ビジネスの大変動を予想する声が大きくなってきた。名実ともにインディーズ出版のリーダーである作家のヒュー・ハウィ氏は、早くも50年あまり続いた大出版社・大書店時代の終わりを語っている(09/06)。ディスラプションの時代にはイナーシャはあっけなく消える。2016年は転換点となる可能性がある。

「ホームラン」欠乏を嘆く大出版社、単打で稼ぐインディーズ

HHowey米英市場でビッグ・ファイブ(B5)神話、あるいは書店神話が崩れ始めている。今年前半の数字は軒並み、近年になく悪いものであり、小売業全体が好調な中での出版の低迷は、もはや「塗り絵」でごまかすことが出来ないほどになった。ヒュー・ハウィ氏のブログでの発言は「大出版社(の時代)は終わった」ということに集約される。

B5は「大ヒットがなかった」ことを不振の理由にしている。これは「特大ヒット」が前年にあった場合の説明としては普通だが、そうでない場合は見苦しい言い訳となる。B5はヒットを出すビジネスを自任してきたし、作家には「売れます」と言って契約を取りつけているからだ。まったく期待に届かなかったとしたら、著者の失望を買い、インディーズに心が動く。

strike周知のようにハウィ氏は Author Earnings というプロジェクトを The Data Guy (DG)と組んでビッグデータ・アプローチによるE-Bookの市場推定サービス・プロジェクトを立上げ、出版界に衝撃をもたらした当人で、旧出版の関係者にとっては疫病神のように感じられるだろう。それを意識したように、ヨット暮らしを満喫し、その日暮らしの生活から脱して毎月5桁の売上を上げられるようになったインディーズ作家をヨットに招いた話などをして刺激している。そして、巨人がよろめき、中堅出版社が取って替わることを予想する。

書店も「小さい店を多くの場所で」展開することがよいと述べている。これは少なからぬ人が提唱し始めた考え方で、1960年代以降の半世紀にわたって市場の過半を支配してきたモデルの否定だ。アマゾンの店舗展開も同じ発想に立っている。これは米国の周回遅れて進んできた日本の集約化にも影響を与えるだろう。日本型小規模書店には未来が開けるかもしれない。

やはり自滅していた大手の対アマゾン戦略

アマゾンのプラットフォーム・ビジネス(ネット通販+ロジスティクス)以前には無敵だったB&Nやボーダーズの大量仕入・大量販売のビジネスは、ライフスタイルの変化に対応できなくなっており、さらにそれに対応して規模を大きくしてきたB5のビジネスモデル(伝統出版社のブランド=ブティック化)とともに自己崩壊を始めたようだ。

Bloomberg_on_Amazonアップルとともに「エージェンシー・モデル」を導入し(2010)、2年後に独禁当局に完敗を喫した時点では、B5は(E-Bookを含めて)市場を支配していた。しかし「謹慎明け」で再度アマゾンに契約方式変更を迫った2014年、情勢は一変していた。新聞を味方にアマゾンに真正面から戦いを挑んだ巨人たちの姿は、アマゾンを苦笑させたろう。30%の販売手数料と引き換えに価格決定権を手にした彼らは、アマゾンにDRMの鍵を渡して読者管理を委ねた時のように、何をやっているのか、どうなるのかが分かっていなかった。彼らは最も活気のある市場を著者に渡していたのだ。

物事にはスケールがあり、市場でのスケールはチャネルとシェアで決まる。大出版社はアマゾンのつくったチャネルが価格を決めることを拒否した。アマゾンは自らの築いたチャネルが大出版社の参加なしで(市場として)機能することを知っていた。そしてそれを実証した。出版社の無力は、「想定内」としたKindleだけではなく、むしろ印刷本市場で露呈したのである。価格をめぐって宿敵であったB&Nと比べて、アマゾンはスケールが違っていた。

旧約・出エジプト記で、神はファラオの心を「かたくなに」させた挙句、エジプトに7つの災いを下し、さらに「かたくな」と「災い」をしつこく繰り返す。ファラオはともかく、エジプトの民は堪ったものではない。アマゾンが出版において「ただ二つの不可欠な存在」とした著者と読者を軽視したのは、傲慢というしかないが、それで在来出版が崩壊したのでは困る。先に目覚めてほしい。 (鎌田、09/08/2016)

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