「未来」が消えたブックフェア

tibf2016今年から形を変えて再登場することになった東京国際ブックフェア(TIBF)を見てきた。「コンテンツ」と別れ、「電子」と手を切った「ブック」だが、やはり、このままでは続かないだろう、という印象だ。過去も未来も見えず、現在という「売り場」を提供するだけでは出版の歴史的・社会的責任を果たせるわけもないからだ。

「読者のための」展示即売会?

ブックフェアから「電子」と「ビジネス」が消えたらどうなるか、と考えていたが、やはりかなり悲しいものだった。スペースは縮小、狭い通路に中小サイズのブースがひしめき、本棚を並べた夜店状態。とても日本を代表する「書籍イベント」という雰囲気はない。コンテンツをガードしていた「デジタル」が消えたら、「出版」が丸裸になった印象だ。

主催者・出展者ともにコンセプトがないので、フロアプランも明確でなく、ゾーニングもあまり意味がない。書店の陳列棚に出版社ブースが付いた程度のものだ。皇族をお招きした「国際ブックフェア」は、日本の出版の水準を世界に誇る場となるべきもので、応接間が散らかしている状態は、とても恥ずかしい。会場も不釣り合いに大きく、にもかかわらず狭い。

2割引というメリットは読者にとって嬉しいし、普段手が出ない高額本を探す人もいたが、出版社の人が声を涸らして目玉本を連呼する姿は、悲壮感が漂っていた。「せっかくの機会」は、新企画発表や著者や読者との懇談の場にでもしていただきたいのだが、出版関係者は商売に忙しく、本について「話す」暇はないのだろうか。それほど余裕をなくしているように見える。割引フェアは全国書店でやればいい。書店はそのためにある。割引を「禁止」しておいて、版元が展示会場で小売販売をするのは、いい加減に止めてほしい。

2010年にほぼピークを迎えたTIBF+eBooksは、震災を経て2012年からはデジタルが目立つようになったが、それはそれで「出版」の力を示していた。IT系を吸引する力は、コンテンツと読者に由来するものだからだ。内容と展開において未成熟な「デジタルコンテンツ」も、「出版の未来」の一端を示して期待させるものがあった。そして今年「未来」は消えた。「電子出版EXPO」をなくして残った「電子書籍ゾーン」では、ボイジャーが孤軍奮闘していたが、ボブ・スタイン氏を迎えたトークも、明日を語るよりは、しみじみと昨日を想い出す趣が強くなる。往時を知る筆者の年齢では寂寥感を禁じ得ない。やはり、ミック・ジャガーのように、ロック世代のパワーが失われていないところを示してほしかった。

ともかく、このままではいけない。もはやブックフェアでも何でもない。紙とデジタルの問題でもない。一方がだめになると、他方もだめになる関係を「唇歯輔車」というが、かつてのエコシステムが解体を始めた今の出版は、自信と意欲を失って嚙み合わなくなった。それぞれの持ち味が見えない。日本で起きるほとんどの現象と同じく、特定の誰かの責任でこうなったわけではなく、誰もが止めなかったから、あるいは誇るべき過去、未来のビジョンが共有できなかったからこうなったのだ。関係者は、あるいは同憂の士は再建の方向を模索すべきだ。本誌も議論の場はいくらでも提供したい。 (鎌田、09/26/2015)

 

 公式ビデオ「オープニングセレモニー」

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