米国BISGの再建と再挑戦

bisg_logo米国書籍産業のシンクタンクBook Industry Study Group (BISG)の事務局長に、著名なコンサルタントで理事を務めていたブライアン・オリアリー氏が就任した。ここ数年の内部混乱で業界内外の失望を買い、火中の栗となっているポストを引き受けた新事務局長は「できることをやって信頼を回復する」必要を語っている。

ブライアン・オリアリー氏の登場で再び改革に挑む

brian2BISGは創設40周年を迎える。各種の調査レポート、統計システム、ISBN問題への取組み、メタデータ(Onix)の整備など、デジタル転換に対応する活動を精力的に行ってきた、と本誌も評価してきた。問題が表面化してきたのは2013年の総会以降で、IDPFとの連携やBookStatsの拡張など、推進されることになっていた「デジタル強化路線」は2014年から潰されていったようだ。経緯は明らかではないが、大手出版社を中心とするAPAの反対で、デジタル/自主出版に傾く流れがBISGにおいて止められたことは、その後の「第2次価格戦争」以後の流れを見ていると推定できる。

mark-kuyperほぼ3年にわたって、BISGは中期的な方向や方針を示せず、この間の混乱に関する説明もなかった。前任のマーク・カイパー事務局長(BISG理事で前任ポストはキリスト教福音派出版協会会長)は、わずか1年で辞任した。筆者が昨年フランクフルトで見掛けた、上品温厚で知性的風貌からは、展望を共有できないまま、泥沼化した業界の難局を打開するカリスマと政治力は無理と思われたが、果たして1年で辞任してしまった。再建を期待される次のブライアン・オリアリー氏は、『マニフェスト・本の未来』(オライリー/ボイジャー、2013)を共著した見識者だが、「BISGは万人を満足させることはできない」と断りつつ、標準化および会員構成の多様化推進を重視する姿勢を明確にしている。これはかつてのBISGを代表し、内紛で打撃を受けた調査部門の再生は目下の最優先課題ではないということでもある。

データ出版、教育出版系の参加拡大で改革を目指す

rebuild会員企業数は178社から184社に増加したことが報告されたが、新会員として情報サービス大手のEBSCO、Web標準化機関のW3Cが参加し、調査分析会社のOutsellとの提携が発表されたことは注目に値しよう。会員ベースを在来出版社からデジタル情報サービス企業に拡大し、標準化活動ではW3Cと協力、そして課題が多すぎる調査部門の再建よりも、デジタル系アナリティクス・サービスとの提携を優先するという方法は、手堅く現実的なものに思える。

「会員を拡大し、構成を多様化するのは、それが目的だからではなく、解決すべき問題を解決するために必要なのです。それは理事や委員長、委員会構成や作業グループに至るまで、すべてのレベルで必要であり、それが(出版サプライチェーンにおける)多種多様なビジネスを代表していない限り、私たちのソリューションはベストなものとはならないからです。」

41ipfinltyl-_sx348_bo1204203200_BISGが「書籍産業」から「コンテンツビジネス」に名称を変更しようとし、そのためにBISGの看板ともいえる調査部門の刷新を優先させた2012年当時の方針は野心的に過ぎた、旧態依然たる会員構成を変えずに、一直線に改革しようとしたのが、政治的に考えれば、あまりにナイーブすぎた。オリアリー氏は、BISGに大きな影響力を持った在来出版社が動揺しているタイミングに「火中の栗」を拾うことになった。書籍/コンテンツのマーケティングや流通で重要な標準でしだいにリーダーシップを発揮していくことが期待される。

大手出版社の最大の誤りは、デジタルを恐れたために、そのすべてをアマゾンに委ねてしまったことであった。それによってアマゾンは万能になった。オリアリー氏には、「デジタル出版ビジネス」をアマゾンから独立させることが出来るだろうか。 (鎌田、10/04/2016)

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