フランクフルトBF2016開幕

thzbk9pcv6今週は19日からフランクフルト・ブックフェア (FBF2016)が開催されている。第1日目を終了した時点だが、今年は現地で発行されている3つの専門誌の特集版から情報を拾っていくことにしたい。昨年からホール・レイアウトを一新、「より活動的に、より国際的に、より深い関わりを」というコンセプトを打ち出したが、どう展開しているだろうか。

出版と政治は不可分で議論は避けて通れない

43277-v2-600xFBFでは Publishers Weekly、Publishing Perspectives、The Booksellerがそれぞれメインの3日間を中心に取材、報道する体制を組んでいて、印刷版とWeb版で発行されている。そしてこのイベントが特別であることを物語るのは、各国の代表的新聞、TV、雑誌などのメディアが取材に訪れることで、地元のTV局はサテライト・スタジオを設置してインタビューやトーク番組を生中継している。ドイツ政府の外交・文化行政のトップはもちろん、国賓やセレブが多いのも、出版という産業が文化外交で特別な位置を占めている重みのゆえである。

昨年は基調講演に作家のサルマン・ラシュディ氏を招待したことに抗議して、イラン政府がボイコットを指示したことにより、緊張した開幕となった。今年も政治と無縁ではなく、各国出版団体の連合組織である国際出版人協会(IPA)のリチャード・チャーキン事務局長(ブルームズベリー出版社=写真上右側)が、トルコでの出版弾圧に重大な懸念を表明し、「言論の自由」を強く訴える内容の講演を行った。夏のクーデター未遂事件以来、同地では30もの出版社が閉鎖され出版人の国外脱出も相次いでいる。IPAでは昨年、サウジアラビアと中国の加入を認めたことで批判を受けており、旗幟を鮮明にする必要があったようだ。

初日(19日)のハイライトから

初日のハイライトは、チャーキン氏による「言論出版の自由」の基調講演のほか、以下のようなものが挙げられる。

CEOトーク:有力出版社のCEOがジャーナリストのパネルによる質問を受けるセッションで、今年はスウェーデンの大出版社ボニエABのヤコブ・ダルボリーCEOを呼んで、「デジタル」と「グローバル」を中心とした戦略を聞くことになっている。

ヤング・タレント:英国のオライオン出版傘下のTrapexeの編集者、エマ・スミス氏が最近のポップ・カルチャーのトレンドを語る。若く有望な作家、若い読者を重視していることを示す企画だ。

Arts+:活字出版の枠から出て、広くアート・シーンとコミットする姿勢を示すイベントで、今年は米国在住の英国人画家デイヴィッド・ホックニー(79)を迎え講演が行われた。毎朝iPadで制作を始めるなど、創作意欲は旺盛なようだ。今年は美術出版のTaschen社からノグラフが出版される。

スペシャルトーク:FBFボース総裁と文芸ジャーナリスト・作家でマン・ブッカー賞財団のギャビー・ウッド事務局長の対談。

ヨーロッパ:英国のEU離脱や難民問題、テロ、宗教対立、東西対立など、今年は様々な意味で「ヨーロッパ」が焦点となった。政治と不可分なこのテーマを欧州の作家・知識人が議論する、というのは出版と社会との関りを重視するFBFの姿勢を示すものとなるだろう。 (鎌田、10/20/2016)

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