拡大するオープンアクセス学術誌出版(1)

open_access出版シンクタンクのシンバ・インフォメーション社は10月6日、無償の公開学術論文誌であるオープンアクセス・ジャーナル(OAJ)の最新動向と中期予測を発表した。「市場」は急成長を続けており、シンバ社は、今年230万件のOA論文が2020年に300万件に達するものと予測している。何世紀にもわたって維持されてきた学会誌出版への影響は避けられないだろう。

著者が査読手数料を支払う「ゴールド」

simba_logoシンバ社の調査レポート、"Open Access Journal Publishing 2016-2020"(以下OAJP-2016) は、OAJの動向と、シュプリンガー、PLOS、Hindawi、ジョン・ワイリー&サンズ、エルセヴィア、Frontiers、Wolters Kluwer Medknow など有力学術出版社にフォーカスしている。

シンバ社はオープンアクセスを「学術研究出版物を、無償かつ版権制限のほとんどを解除してオンライン配信するサービス」とし、一定期間後に解禁される文献を含めている。OAJではAPCという論文審査料を提出者が負担するものが多い。OAJに掲載することを「ゴールドオープンアクセス」と呼び、OAJに依らずにセルフ・アーカイブを使う方式を「グリーンオープンアクセス」と呼ぶ。バイオなど、分野によってゴールドとグリーンの力関係に違いがある。

large_academicjournalレポートによれば、APCの売上は急成長しているが、購読は無償であるために、規模や利用は外形的に判定するしかない。出版社の収入としてはまだ2015年のSTMジャーナルの世界市場の3.2%を占めるに過ぎない。しかし市場の性格を考えれば軽視すべきではないと言われる。The Directory of Open Access Journals (DOAJ)は230万件のOA論文を登録しているが、レポートは2020年までに300万件を予想している。シンバ社のダン・ストレンペル上級アナリスト上級分析員は「オープンアクセスは急速に拡大しており、その成長率は近い将来、既存の購読モデルに圧迫を与える。OAの価格設定とコストに自信を深めている出版社は、OAへの転換を選択することになる。」と述べている。

OAコンテンツの普及は、非市場的出版物が、経済的、社会的な機能を果たすということを意味しており、単純に「ゴールド」の経済モデルが成立するかどうかだけでも簡単ではない。論文の査読料を稼ぐことがビジネスになり、粗製乱造になる可能性はある。しかし、閉鎖的な有名雑誌でもトンデモ論文が載ることはあり、むしろ公開されることで衆目に晒されて粗悪な論文は淘汰されやすくなる可能性もあるだろう。現代は研究テーマと論文を評価することが、かつてなく難しくなっており、かつてのように「斯界の権威」だけに頼ることが困難になっているのだ。ネットワーク化したことによる問題はネットワーク上で解決するしかないし、必ずそうなるだろう。 (鎌田、10/11/2016)

OAJP-2016は、$2,500ドル(ダウンロード)で発売されている。

  • Chapter 1: Open Access Publishing Market
  • Chapter 2: Leading Open Access Journal Publishers & Repositories
  • Chapter 3: Issues Facing Open Access Journal Publishing & Forecast
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