2016-17年のトレンド:(9) Web化する出版

IDPF_W3C-280x150出版における標準化とは、今日から明日につながる出版を定義するものである。ここでは商業出版だけではなく、あらゆるタイプの出版が、連携を保ちつつ多様なコンテンツとサービスを発展させるための産業=技術インフラが求められる。IDPFはW3Cとの合併によって、それがWebと不可分であることを宣言した。

本/出版にもいろいろある:商業出版の凋落

web_toolsIDPFがW3Cに吸収合併されることで何が変わるか、あるいはそもそもこの統合がうまく機能するかどうかは未知数な部分が多く、今年1年の動きから目が離せない。しかし、現実的に考えて、EPUBをより総合的なものとして持続的に発展させ、出版を未来につなげるにはそれしかなかった。忘れてはならないことは、出版には様々なタイプがあり、それぞれに特有なニーズがあることだ。筆者は出版のタイプを以下のように分類している。

  • 商業出版
  • 教育・学術出版
  • 産業(B2B)出版
  • 企業出版(B2C)

標準化ニーズは、ファイル形式、サービス仕様、メタデータ仕様などに分かれる。標準があれば、異なるサービス間の連携、統合も容易化され、関連タイトルが探しやすくなり、一つのサービスの停止がユーザーにダメージを与えることも少なくなる。これらはコンテンツを社会的に有用ならしめるために必要なもので、出版が本来の目的であるコミュニケーション手段としてのパフォーマンスを発揮するための社会的インフラと言える。

この時代の「出版ビジネス」のデジタル標準をW3Cと連携を維持しつつも別に策定するには、出版業界の側に相当な力がなければならないが、少なくとも商業出版の側からデジタルのビジョンを提示するものはなく、その機会は無謀かつ無定見な「価格戦争」によって最終的に失われたと筆者は考えている。高価格によって市場に水をかける企業が、E-Bookの普及を促進する標準の方向をリードすることはあり得ないからだ。

サービス化による出版ビジネスの構造変動

technology_standardsW3CにおけるEPUBの活動と発展は、主として教育、学術、B2Bなど、非商業(教育・実用系)出版を中心としたものとなるだろう。商業出版も標準を必要としているが、そのニーズ(要求)を「業界」として収集・整理し、優先をつけ、多分野とのパートナーと調整をするような用意は、大手出版社(のトップ)にあるとは思えないし、出版流通のイングラムやベイカー&テイラーにしても同様だ。その結果どうなるか。

web_pub商業出版の標準フォーマットはEPUB3で止まり、非標準的機能はアマゾン(KF)が主導する。これはHTML5+CSS3というW3C標準(あるいはEPUB3)に緩く準拠したものだ。逆に言えば、非商業系で開発されたサービス指向のモデルやインタフェースが商業系に降りてくる形になる。別に悪いことではないが、普及が遅くなるとしたら問題だろう。

現在の出版の世界は、世界的には教育・実用系が商業系をリードする形になっている。企業としては地味なジョン・ワイリーなどが世界最大の出版社としてペンギン・ランダムハウスより上位にある。歴史的にはより古い形(17-9世紀)の復活といえる。これもデジタル化がもたらした結果だ。(鎌田、01/29/2017)

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