アマゾン・ジャパン「直取引」拡大の意味

Amazon_saitamaアマゾン・ジャパンは、出版社との直接取引を段階的に拡大してきたが、出版社へ直接集荷・宅配するサービスを今秋までに始めることを日経新聞(3/22)が報じた。日本の書籍流通の根幹であり「鉄壁」とも考えられてきた取次-書店チャネルが、あっさりと回避できるとすれば、E-Bookへの心理的抵抗などは容易に解消に向かうだろう。

出版流通一元化は最終段階に入った

streamline日経の記事には「埼玉県所沢市に1月、設立した『アマゾン納品センター』を直接取引専用の物流拠点として使う。…すでにKADOKAWAなどが参加しており、複数の大手出版社と交渉をしているもよう」と書かれている。出版社の倉庫から本や雑誌を集め、沖縄を除く全国で発売日当日に消費者の自宅に届けるサービスは、ロットの少ない中小の出版社にも利用しやすくなる。出版社にとっての最大のメリットは、取次手数料を削減することだろう。取次手数料は約1割と言われているが、これをアマゾンと版元が分け合うことになる。折半とは限らず、アマゾンが販元のレイティングに基いて行う可能性が強い。アマゾンに「友好的」な出版社は一気に増えると思われる。

アマゾンによる流通統合が、日本の書籍・雑誌流通を一変する可能性は強まった。大手取次のトーハンと日版は売上を落とし、同じく利幅の薄い書店チャネルの経営環境はさらに悪化する。版元・印刷・取次・書店の4つの業界の大小企業が相互に依存する日本的エコシステムの心臓は、取次の情報・金融・物流機能にあり、書籍と雑誌という性格の違う出版物を同じチャネルで流すところに、この精緻なシステムのユニークさがあったのだが、この多元的サプライチェーンは、インターネットには最も置換えにくいが、非効率性ゆえに効果は最も大きい。そして4業界での影響はあまりにも大きい。

「何でもあり」の時代が始まった

所沢にはK社の「書籍製造・物流工場」が2020年にオープンする予定であり、総工費250億円とも言われるこのプロジェクトとの関連が注目される。場合によってはアマゾンが直接・間接に関わる可能性もあると見られる。「製販一体」というスローガンで進められている「書籍の受注から迅速な製造・発送までを一体で行う最適な生産プロセス、物流システム」に最もスムーズに対応するのはアマゾンだからだ。「さくらタウン」は「アマゾン・タウン」にならないだろうか。

20161226kadokawa-500x246「アマゾン直取引」の拡大によって書店はどうなるのか、E-Bookはどうなるのか、「製販一体」との関係は、というところが注目されるが、これらは出版界の今年最大のテーマとなるだろう。アマゾンが「取次」になる可能性もある、つまり書店まで「配本」することで、書店に手数料を落としてデポとすることだ。これは取次と書店との関係を変化させる。「直取引」は巨人を繋ぎ止めていた鎖を外すことになる。近所の本屋にアマゾンの幟が翻る日が来るかもしれないし、取次が間に入るかもしれない。もはや何でもありの時代になった。

出版社にとって重要なことは、サプライチェーンにおける「デジタル・ファースト」つまり、デジタルを前提にしたストリームライン(最適化)ということで、紙とE-Book、Webの一体運用の体制構築を進めることだ。コンテンツはデジタル(PDFとEPUB/KF)で管理し、タイトルごとにE-Bookを先行させるか、印刷版を同時発売するかを選択する。売上20%増、返本率10%以下は出版社が目標とし、また達成すべき水準だ。 (鎌田、03/23/2017)

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