Kindle ”Unlimited”はどのくらい?

KU4Author Earnings Report (AER)は、変化の大きい市場について毎回新しいパースペクティブを提供している。今回は、グローバル(英語圏)な視点と、マルチベンダーという視点が入ったことで、新しい出版市場についての最もデータ・リソースとしての地位を確立したといえるだろう。とくに注目したいのはKindle Unlimitedの規模だ。

アマゾンのシェアに変動なし

最新レポートでまず注目されたのは、ストアの相対比較だ。アマゾンを100とすると、iBooksは10.8、Nookは4.8、Koboは0.3と少数以下だ。2010年時点の米国で2位だったNookはiBooksに抜かれて3位に沈んだが、それでもKoboには負けない。米国でのKoboの弱さはどうしようもないだろう。かつてはホームのカナダで拮抗していたことがあったが、ここでもアマゾンの半分以下だ。5市場のトータルでも、アマゾン比で2%とNookとはかなりの開きがある。沈み続けるNookと浮かばないKobo。北米市場の現状は、B&Nと同様、楽天にとっても、いつまでも放置できないものであり、撤退する気がないなら、答はNookが回復不能にならない段階で買収することだろう。問題は金額だ。

CHANNEL-PIES-2-768x768出版主体タイプ別でみたストアのシェアを国別で見ると、当然のことながら、規模の大きい在来出版ほどアマゾンのシェアは低く、インディーズほどアマゾン依存が大きい。とはいえ、大手5社でも70%で、インディーズの91%と「五十歩百歩」でしかない。中小出版社は85%であり、こちらはインディーズに近い。アマゾンへの過度の依存を避け、高価格を維持している大手5社でさえ70%ということが重要で、これは2013年と同じ水準だ。14-15年の長期紛争を経て2年ぶりにエージェンシー契約を獲得した5社だが、時間とシェアと著者を失い、印刷本市場のアマゾン・シェアを高める最悪の結果だったということになる。

KUは販売市場と並ぶ新しいチャネルに

現時点でのE-Bookの世界市場におけるアマゾンのシェアは約8割と推定される。それはさらに伸びている。大手出版社が価格設定権を奪還し「定価」を強制しても、Kindleのシェアや売上への影響はなかった。著者が自主出版を選んだためだ。80%というシェアは、価格競争力以外の要因の重みを示した。それはコンテンツの選択肢(Kindle Select=アマゾン独占)で、大手出版社の行動はインディーズ(非出版社)モデルの有効性を実証する格好の機会となった。著者にとってのKindle Selectの意味は、第1に70%あまりの版権料であり、第2にKindle Unlimitedという別チャネルへの期待だったが、後者は期待以上のものへと成長した。

CHANNEL-PIES-2-wide-768x768AERは、KUの完読数を販売に換算することで、KUを含めたE-Book市場の規模とベンダー別シェアを推定している。それによると、米国市場での年間販売冊数は4億8,730万冊で、KUのシェアは12.8%を占める。これはiBooks(9%)を上回り、Kindleの販売(70.5%)と合わせて83.3%となる。著者が「Kindle独占販売」を心理的に問題なく受け入れる際の目安は、シェアで8割あまりと思われる。印税7割の有難味は実収と結びつかないと意味がない。6割以下では自意識の強い著者たちが他での販売機会を断念するには足らず、7割も迷う範囲だと思われるからだ。

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E-Book8割は著者たちの選択に説得力を与えるレベルだろう。アマゾンに9割が集中するのは、もちろん、100%アマゾンのKindle Selectを選択した著者が多いためで、オープン市場でのシェアだけをみれば、アマゾンは75%で、これは大手5社のアマゾン・シェア70%と大差ない。アマゾンのシェアは、独占チャネルであるKindle Selectとアマゾン出版によって圧倒的なものとなっていることが分かる。KUはKindleエコシステムの優位を決定づけた。読者、著者の両方にKindleユーザーであることのメリットを与え、このシステムに持続性と推進力を与えることだ。アマゾンのビジネスモデル設計のスケールと重層性、バランスの巧みさには感嘆を禁じ得ない。 (鎌田、03/14/2017)

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