スペインDD社の出版ビジネスモデル論

business_model4スペインの出版シンクタンクDosdoce.comは、ロンドン・ブックフェアを前に、『デジタル時代の新しいビジネスモデル』と題した英文のレポート(約70ページ)を公表した。読書は(水や電気のような)ユーティリティとなった、という時代認識に立脚したユニーク切り口で15のビジネスモデルを検討した内容は予想以上に重い。

読書がユーティリティ化する時代の出版

newbusinessmodels400ドスドーチェ社(DD)の調査は、スペインのCEDRO (版権センター)の委嘱を受けて行われたもので、2014年にスペイン語で発表されたものがベースになっている。同社は、出版ビジネスで利用されるものとして、インターネットを使った15種類のビジネスモデルを定義している。インターネットを使わないビジネスモデルは考えられないので、これは妥当だろう。

まだざっと目を通しただけだが、とてもしっかりした構成だ。欲を言えばきりがない(例えばバックグランドのIT技術、とくにAIや、先進企業の事例、人材問題など)が、これらは今後に期待される。Publishers Weekly (04/24)は、レポートの共著者でもあるDDのハビエル・セラヤCEOのインタビューを掲載している。セラヤ氏によれば、出版社による新しいビジネスモデルへの取組みは顕著に増加しているとしつつも、評価段階からさらに前進していくためには、長期的に試行錯誤しつつ固めていく上での、オープンで起業家的なマインドセットが重要なのだが、そうした文化をつくることに成功していない、と指摘している。

セラヤ氏によれば、中期的(5年)な変化を読むのは難しく、ますます複雑な様相を呈する、という。「とくに出版人の多くが読書をユーティリティとして考えたくないのに対して、現実はますますその方向に向かっているからだ。私たちは水や電気を消費する前に代金を払ったりはしない。必ず消費した代金を支払う。なぜ読書は違うのか。現代は膨大なユーザー・コンテンツへのアクセスがいつでも可能になった。出版人はユーザーが文化的コンテンツの創造・アクセス・消費に主体的に関わる時代のニーズに対応したビジネスモデルを考える必要がある。」

utilityKindleによって、アマゾンは本をコモディティ化した、と(非難を込めて)言われてきたのだが、Webコンテンツに注目してみると、コモディティどころかユーティリティという流れがより大きなトレンドとしてあり、コモディティとしてのコンテンツにオーラをかぶせて「差別化」してきた20世紀の活字出版ビジネスモデルがもはや通用しないことは明らかだ。 (鎌田、05/16/2017)

0. 序文

1. デジタル・ビジネスモデル
1.1. マイクロペイメント(少額決済)とコンテンツの断片販売
1.2. ペイ・パー・ユース:PPVストリーミング版
1.3. 定額サービス
1.4 会員制サービス
1.5 フリーミアムとプレミアム
1.6 埋込広告
1.7 オープンアクセス
1.8 P2P-MOOC(オープン教材)

2. 実験から実証を目指す新しいビジネスモデル

2.1. Pay-What-You-Want(言い値販売)
2.2. バンドリング
2.3. クラウドソース・ファンディング
2.4. ゲーミフィケーション
2.5. 出版社直販
2.6. 自主出版
2.7. 図書館電子貸出

3. コマースの現状と有償モデル (Paid Models)の発展

3.1. 小売販売からeコマースへ
3.2. デジタル・ビジネスモデルの鍵を握るビッグ・データ
3.3. 無償から多様化へ:融合への動き
3.4. 能動的消費者:プロシューマーとユーザー・コンテンツ

4.結論

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