デジタル筆記具の統一規格WILLの普及へコンソーシアム

dsc-logoペンタブレットなどで入力した手書きのメモや図、スケッチなどのデジタルインク・データを、異なるプラットフォーム間で交換可能とする汎用的規格を普及するためのDigital Stationery Consortium (DSC)は昨年10月に日本のワコムの提唱で発足した。エンジンとレイヤから成るWILLフレームワークで合意しており、普及が期待される。

「デジタル・ステーショナリ」市場の創造へ

WacomDSCは今年新たにサムスンとモンブランをメンバーに加えて影響力を強めた(1/5)。オープンソースのWILLフレームワークは、ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションを接続し、高精度なペン入力や自然なインク表現を、直感的な手描きで実現する。ネイティブなインク・データのほかに、異なるメーカー間でのデータ交換が可能になる。DSCは、開発者、E-Readerメーカー、スマートフォン/タブレット・ベンダーの採用拡大に向けて年4回のイベント(Connected Ink)開催を予定している(第1回は上海で6月7日)。DSCの設立目的としては7項目が挙げられている。

  • 新しい創作表現、市場の成長、生産性を実現する「デジタル・ステーショナリ」を新しい市場として推進する。
  • デジタル・ステーショナリを創造・普及するためのパートナーシップを促進する情報交換やネットワークを提供する。
  • オープン、グローバルな国際的パートナーシップを支援する。
  • 新しい市場、ユーザーニーズ、デジタル筆記体験のための要件を探求・開発する。
  • WILLをさらに発展させ、様々なエコシステム、プラットフォーム、アプリケーションの間の懸け橋になる、真の汎用的デジタルインク・システムとして確立するための普及・啓発を行う。
  • デジタル筆記具を「クラウド、分散、スマート」なエコシステムの中核とする方法を開発する。
  • ユーザーのための新しい価値、ユースケースを確立するためにデジタル筆記具市場を拡大させるための情報・知見の交換を推進する。

手描き/手書き文化の復活への期待

calligraphyデジタルによる手描き/手書き文化の復活は、音声言語の復活とともに、人類のコミュニケーションの歴史を創造的に発展させるもので、創作表現やメディアに大きな影響を与えることになると思われる。これまではOCRにつながる「手書き」と、サインやペイントにつながる「手描き」など、用途が異なる筆記具から生成されるデータの構造化・表現の規格化に多くの時間が費やされてきたと想像されるが、DSCという中心が生まれることで異業種間の交流も容易になるだろう。

個人的に関心を持っているのは出版との関連で、とくに世界の各地域に残るカリグラフィによる「非活字出版物」と活字出版との双方向の変換/交流は重要だと思う。『西東詩集』(1819)を著したゲーテ (1749ー1832)は、ハーフェズの詩を「体験する」する手段として、流麗なペルシャ書道を学んだと伝えられる。書はオリジナルが音声言語である詩文を体験する重要な手段であり、活字によってその伝統が断絶したことは、近代日本の大きな損失でもあった。WILLがブックに採用されれば、古典の様々な形での復活が容易になるだろう。 (鎌田、05/17/2017)

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