モバイルの次が「声」である理由

518562-google-homeiPhone以後、メディア業界の最大のキーワードは「モバイル」だった。それはすでに既定値となり、広告はモバイルを中心に動いている。そしてどうやら新しいキーワードは「声」(voice)と決まったようだ。ドイツのコンサルタント、オリヴァー・フォン・ヴェルシュ氏は、メディアのビジネスモデルが「声」を中心にしたものとなると予測している。

メディアはWebの失敗を引き摺らなかった

FIPP(国際雑誌連合)が紹介している彼の認識は、捉えどころのない、この新しいインタフェースを理解するのに役立つと思われる (04/27)。モバイルはデバイスではなく、一種のマインドセット(心理状態)である、とヴェルシュ氏は言う。このマインドセットは、ユーザーが別のユーザー、あるいはコンテンツと対話する仕方、そして出版社が制作すべきコンテンツの仕様を規定する。いまどき「モバイル・ファースト」を戦略とするなどという出版社は、5年は遅れている。すでにオーディエンスはそこに移り、他では停滞と縮小が起きているのだ。

Echo3モバイルではプラットフォームの台頭があり、Facebookが変化を主導している。ほんの数年前までは、ユーザーが出版社のプラットフォームを訪れ、対話していった。「昔はよかった」ということだ。「分散コンテンツ」の時代では、Facebook、Instagram、Twitter、それに Googleや Amazon Alexa がユーザーとのインタラクションを牛耳っている。オーディエンスを拡大する効果はあるが、出版社はプラットフォームごとにAPIを用意しなければならず、管理コストも馬鹿にならない。それに、メディアのブランドとソーシャル・プラットフォームのユーザーは、しばしばミスマッチを起こしている。

それでも分散コンテンツには「グローバルなオーディエンス」という膨大なオーディエンスとの接触点を拡大する効果がある。「偽ニュース」問題はFacebookなどのプラットフォームで取組んでいるが、ここでは元々プロのジャーナリストを擁する高級ニュースメディアが優位を占めているので問題はない。むしろ「偽ニュース」を熟知して対応を知っている旧ブランドにとっては追い風となるだろう。

ヴェルシュ氏の認識では、出版社は1990年代にデジタルの最初の波への対応を誤り、後手を踏んでしまった。次のモバイルへの対応はかなりしっかりしたもので、ドイツG+J社の例では、オーディエンスの獲得と収益モデルにおいて、他をリードすることが出来た分野もある。失敗の経験から学んだからだ。

「声」は人類にとって最も古く、最も新しい

Human_voice2彼が現在注目しているのはチャットボットと音声インタフェースだが、前者がまだもっぱらコマース中心でコンテンツへの影響はさほど出ないのに対して、「声」のほうはモバイルの次の大きな波となると見ている。そしてコンテンツに関するやり取りは「声」を介したものとなるだろうと考えている。出版社は、Google Assistant と Amazon Alexaの使い方を積極的に開拓していく必要があるが、自動車など、ホームユースよりもさらに大きな利用場面が考える必要がある。

筆者もこれに同意する。最大の理由は「声」がモバイルというパラダイム/マインドセットに属すると同時に、機械時代よりも古いインタフェースの仮想化で、これまで酷使されてきた目をストレスから解放し、チャットボットとも一体化されているからだ。姿なき「声」は質問に答え、注文を取次ぎ、記事や本を読んでくれる。もしGoogleやアマゾンといったブランドが付いていなければ、これが「次世代メディア」としてブームを呼んでいたことは間違いない。ともあれ「声」がただのブームではない理由は、一つや二つではない。

アップルはiPhoneが成功しすぎてSiriの展開の余地を狭め、アマゾンはFire Phoneの打上げが見事に失敗したことでAlexaにスペースを与えた結果、ノーマークのデビュー勝利を飾った。アマゾンはツキにも恵まれている。 (鎌田、05/02/2017)

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