年2千タイトルを刊行した「分担校正」プロジェクト

dp_logo_twitter_updated日本の「青空文庫」にあたる Project Gutenberg (PG)は、デジタルが出版にとって何であるかを最初に示した事業だが、無数のボランティア校正者によって支えられている。最大の校正者グループ Distributed Proofreaders (DP)は7月1日に3万4,000点目の作業を完了したことを発表した。ボランティアの一人がDPの仕事についてブログ (08/01)で述べている。

「簡単で楽しい」校正ボランティア

proofread4DPでの時間は「ふつうの仕事とは違い、他では得られない、多くの違った世界を見る機会を与えてくれるので、よい気分転換になる」と、4年前にこの世界と関りを持ったボランティアは言う。仕事は簡単で、フォーマッティングという技術的な仕事も入るが、簡単に習得でき、大きなチームの一員なので、互いに助け合いながら着実に進行していく。すぐに友達になれる環境であるというのもよい。DPの成功は、チームのための分担作業環境によるところが大きいと思われる。

DPが無償奉仕の代わりに提供するのは、基本的には「読書の喜び」だろうが、それは直接に「社会的」である。校正という厳密性を要求される作業で納得がいくまで読むという作業が伴うからかもしれない。とくに出版関係者の隠居仕事としてよさそうだが、それに限ることもないだろう。通常の商業出版の中での(スケジュールに追われる中での)校正は、楽しい仕事だとは思えないが、「1ページづつ、歴史を保存する」仕事は楽しそうだ。

「オズ」シリーズ本原作を復刊

OzDPは昨年5月に3万2,000点目を更新したということなので、年間2,000点あまり、月間160点あまりのペースということになる。3万2,000点目のタイトルは、古典的な名作童話「オズ」シリーズ有名なライマン・フランク・ボーム (1856年-1919年)の"Tik-Tok Man of Oz"(オズのチクタク男)であった。DPはボームの「オズ」全作品に取組んでいるようだ。「オズ」は20世紀初めのアメリカ文化史における重要な作品で、ボームのオリジナルのほか、別の作家による別シリーズもある。

pgdp-screenshotPG(あるいは青空文庫)は、出版社には(経済的に)不可能なことがいかに多いかということ、ボランティアでできることがいかに多いか、ということを思い起こさせてくれる。20世紀は膨大な出版事業が行われたが、絶版の山に消えたものはあまりにも多い。「版」とその資産価値を基礎とした印刷本のビジネスモデルは、印刷・流通コストをカバーできない出版を市場から追放(あるいは隠匿)して人々の目に触れる機会を制限した。

一方で(一握りのキャラクター出版物のために)著作権の期限を途方もなく延長しつつ、他方で新刊と一部の在庫本を除いて人々のアクセスを困難にして市場をコントロールしてきたのが20世紀の出版であった。有限な資源を使い、リスクが伴う印刷本では社会的なマイナスも許容の範囲だったかも知れないが、同じスタイルを続けていけば、出版社は社会的・道徳的ヘゲモニーを失うことになるだろう。そしてPG/青空文庫が社会の付託と支援を受けて事業を拡大することになるだろう。

「子曰、之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」

(鎌田、08/07/2017)

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