出版のプロジェクト・ワークフローとチーミング (1)

workflow出版プロジェクトの成否はチームワークで決まる、ということは多くの人が実感することだ。しかし、これは安定した構造を前提としたもので、現代はヒトも場所も編成も技術もポリシーも一定しない環境で「結果」を出すことがふつうに要求される時代だ。そのコンセプトを「チーミング」と呼ぶが、自主出版の課題はまさにこれだろう。

自主出版はどこが違うか

ベス・ベーコン氏によれば、自主出版は、出版に必要なすべてを著者/出版者が決定することで、版下(ファイル)制作などの作業を著者自身が行うことではない。だとすれば、自主出版者がまずなすべきことは、手順と作業内容を決め、工程の依頼先と仕様を記述することだろう。やるべきことは商業出版の場合とまったく同じだ。

workflow3ただし、自主出版者の場合「何を、どう作り、どう売るか」に決まりがあるわけではない。「ふつうの」やりかたが決まっていない時に作業手順(ワークフロー)を1から決めるのは出版社でさえ簡単でない。自主出版者にとって有利なことは過去(しがらみ)から自由なことだけだが、これは従来のやり方と問題点などを知っていてはじめて役に立つことかも知れない。そこで「ふつう」を経験していない出版者にとっては、標準的な(参照)ワークフローが重要となる。ベーコン氏は8段階のワークフローを定義している。

在来出版との唯一最大の違いは、在来出版が(基本的に)書店や取次など出版業界のパートナーを相手にする(B2B)のにたいして、自主出版が読者/消費者を相手とする(B2C)ことだ。つまり、本をつくるまでが第1段階、読者に届いて読まれるまでが第2段階で、ほんとうの勝負は後半にある。これがある程度うまくいけば次の出版計画が立てやすくなるからだ。言うまでもないが、在来出版と異なり、自主出版では著者の意向がすべてだから、成功したプロジェクトの多くはシリーズもので、最初の読者を掴んで飽きさせなかった場合がほとんどだ。

チームの機能はワークフローの共有から生まれる

B2Cはほぼインターネットとともに始まったもので、在来出版社でさえ未経験に近い領域だ。自主出版の成立と発展は「著者にB2Cは出来ない」という固定観念を破って可能となったものだが、多くのインディーズ著者たちの試行錯誤の結果として共有された知識はあるが、整備・保守の行き届いた舗装道路があるわけではない。手掛かりになるのは参照ワークフローだ。

ベス氏の8ステージのワークフローは、基本的にE-Book+印刷本だが、前者に軸足を置いている。余裕があれば印刷本も、ということだが、中小出版社を含めて、これが将来の出版のベースとなると思われる。コストとリスクが大きい印刷本に軸を置けば持続性のある出版企画の範囲が狭まるからだ。ステージ 1から3までは在来出版と重なり、誰もがイメージする「出版」はここまでだろう。読者に読まれることを目的とする(プロジェクトとしての)出版はここから始まると考えたほうがよい。ただし、前段階の失敗が後になるほど重くなる、という意味で、1-3の重要性は変わっていないし、コスト的にも手を抜けないことは強調しておくべきだろう。

ステージ 1. コンテンツの編集
ステージ 2. 表紙デザイン
ステージ 3. 本文レイアウト・デザイン
ステージ 4. メタデータ
ステージ 5. プレリリース(発売前)の準備
ステージ 6. 出版
ステージ 7. マーケティング
ステージ 8. 販売・経費支出の記録

次回で、ベス氏の8ステージを簡単にご紹介した上で、自主出版における「チーミング」の課題を考えてみたい。 (鎌田、08/01/2017)

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