The Village Voiceが印刷版を廃止

VV_logo米国では雑誌の印刷版廃止の動きが拡大しているが、1955年創刊のニューヨークの「オルターナティブ」ニュース・文化紙 The Village Voice (VV)が印刷版の発行を停止することを発表した。今後はオンライン版に集中することになる。なお、同紙は2015年に旧オーナー (Voice Media Group)から大富豪のピーター・バルベー氏の所有となっている。

戦略を誤った米国文化のアイコン

VV_anthologyVVは筆者も1970年代に購読していたこともある、なかなかに楽しい雑誌だった。1996年、有料購読者数の落込みに対処するためにフリーペーパーという泥船に乗ったのはVVの最悪の選択だったが、それ以上に1994年に始まるデジタル革命の10年間に対応しなかったことが「空白の20年」を生んだように思える。けっきょく、バブル崩壊というより紙のビジネスモデルの崩壊に付き合った日本の雑誌出版と同じ道をたどったのだ。

かつての栄光が輝かしいだけに、紙のブランドを守ってきたのは理解できるが、それがデジタルでの再建を遅らせてきた面は否定できない。紙の編集サイクルからくる時間感覚は独特の心地よさがあり、内部の人間にはとても変えられないだろう。バルベー氏はVVブランドをWebにおいて再構築ようとしているが、まずWebポータルのリデザインから着手した。

5月に刷新されたサイトはビジターを拡大している。ニューヨークを代表する文化メディアとしてのプロジェクトも強化されており、とくにThe Obie Awards (オフ・ブロードウェイ舞台演劇表彰)と The Pride Awards(LGBTQ権利運動)の2つの表彰イベントをスポンサードしている関係で、これらを中心としたボイスを発信していくようだ。

デジタルでの再出発

創刊以来、グリニッジ・ヴィレッジを拠点にニューヨークの文化を代表してきたVVは、文化とジャーナリズムに大きな影響を与えてきたメディアで、エズラ・パウンド、ヘンリー・ミラー、ジェームズ・ボールドウィン、アレン・ギンズバーグなどの作家を擁した執筆者は、ジャズを中心とした音楽文化、映像文化の普及に貢献をしてきたし、公民権運動と結んだリベラル・ジャーナリズムでも知られた。20世紀後半の米国文化(非主流)のアイコンとして世界的な存在だったと言えるだろう。

The_Village_Voice_NYヴィレッジとともに育ったかつてのビート・ジェネレーションは、齢とともに尖鋭性がなくなり、「オルターナティブ」が見失われ、世界的なライターを輩出しなくなった。社会とメディアビジネスの変化への適応が遅れたのは自然な現象だが、経営的には(定期購読から)1996年に広告中心のフリーペーパーに転換したのが大失敗で、21世紀の初めには伝統的な収入源の求人広告を失って経営が悪化、2005年にニューヨーク・タイムズ紙が買収したが、経営と編集の再構築が出来ず、大富豪のバルベー氏の手に渡った。

文化的影響力が強いニュースメディアは、IT系大富豪の手で再建あるいは存続する例が目立つが、普通の大富豪家であるバルベー氏の下で、経営と編集の再建がなされることを期待したい。 (鎌田、08/23/2017)

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