AmazonCrossing:翻訳から「世界文学」へ (1)翻訳

PWStar_watch_banner2フランクフルト・ブックフェア (FBF)が米国のPublishers Weekly (PW)と共催して米国出版界で目覚ましい活躍を見せた人物を表彰するPW Star Watchの今年の「スター」に、AmazonCrossingのガブリエラ・ペイジ-フォート出版局長が選ばれた。米国で難しいとされてきた非英語コンテンツからの翻訳出版を成功させたことが評価されたもの。

今年の米国出版界の「スター」は翻訳出版から

StarWatchPW Star Watchは、2015年から開催されているイベントで、過去にはHarperCollins Children’s Booksの編集者アンドリュー・ハーウェル氏、Riverhead Booksのアート・ディレクター、ヘレン・イェンタス氏が選ばれている。今年も200名あまりの推薦候補があり、その難関を突破したのは、出版社としての実力を評価されつつあるアマゾン出版のなかでも、非英語作品の翻訳出版という、この国では特殊とな存在と見られてきたジャンルを扱うAmazonCrossingをビジネスとして軌道に乗せたガブリエラ・ペイジ-フォート(以下GPF)氏だった。

AmazonCrossingは、アマゾンのグローバル・コンテンツ戦略の仕掛けの一つで、米国(他の市場)でも売れそうなタイトル、作家を発見し、米国や英語圏からヒットさせていくという、基本的にはデジタル・ファーストのプロジェクト型出版である。これが同社のビジネスにおいてどう位置づけられるかは後半で検討してみる。

「いまを生きる他者の目に映った世界」を共有する

AmazonCrossing_logo ACを担当してきたGPF氏のコンセプトは、「文芸書というカテゴリーを超えたよいストーリー」を、翻訳を通じて英語圏を中心とした世界の消費者に提供するものとしたが、これは「翻訳書」をさらに「小分類」して見つかりにくくする業界の慣行を崩すものだった。9月に出したフランスのマルク・レヴィのベストセラー恋愛小説 'P.S. From Paris' (By Marc Levy)に続けて、同じ著者の ’All Those Things We Never Said’を10月に刊行するといったケースはこれまでは稀とされる。もちろんアマゾンのマーケティング・ロボットは、タイトル/著者ごとに最適なターゲットを選び出して販促を怠りない。来月刊行される中国の賈平凹の 'Happy Dreams' は、予約で中国文学部門のベストセラーとなっている。

GPFGPFは出版のキャリアは17年あまりで、8年間を学術出版社のContinuum(現在Bloomsbury 傘下)で過ごした。ニューヨーク大学ではロマンス諸語とクリエイティブ・ライティングを専攻し、翻訳にはもともと強い関心を持っていた。膨大な数の本を読んで評価する能力は高く評価されているが、同時に各国市場でユニークな「人気」という現象にも鋭い感覚を持っているとされる。業界人からは「変わり者の編集者」と見られるだろうGPFの潜在能力を、ACは見逃さなかった。ACの漠然としたミッションを現実化するのに、彼女ほどの適役はまずいないだろう。

GPFは、グローバル化と同時に分裂しつつある世界の現状に深い懸念を抱き、文学を通じて世界を結びつける仕事に使命感を感じている。それは「人々が違和感よりも多く親近感を持てるストーリーを見つけ」て「いまを生きる他者の目に映った世界」を互いに共有する」ということだ。 (鎌田、09/12/2017)

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