本誌7年目

owl_renewal_rev本誌は2010年9月15日に創刊し、読者とともに7年目を迎えることが出来ました。当時は「元年」とか「開国」と騒がれ、専門のイベントやメディアも生まれ、期待/不安が同じ程度に高かったころ。現在の状況は逆方向ですが、数世紀に1回の「メディアの大転換」というマクロな視点から眺めてきた筆者にとっては、これも想定の範囲内です。

メディアは、その容器によって内容を限定され、輸送手段によって到達範囲を制約され、オーディエンスによって認知されることで存在します。文字によるコミュニケーションとその担い手は、文明社会において一貫して特別な位置を占めてきました。人類の知識遺産の多くは、文字に記録されて保存されたからです。文字=知識へのアクセスは、当人が利用可能な教育、環境によって制約されます。そのために、文字に関するスキルは社会的地位を得るためのパスポートにもなっていました。

いま、そのパスポートの商業的価値は暴落しています。パスポートとともにコンテンツの価値も不安定になり、多くの関係者は「正当に評価されなくなった」と感じています。筆者もその一人です。つまるところ、犯人がデジタルであることは言うまでもありません。紙だけを信じて守り続けようとする人の気持ちはよくわかります。

しかし、この変化は仕方がないものです。情報とコミュニケーションのインフラが変わって、メディアと社会が大変動に巻き込まれるのは、もちろん今回が最初ではありません。日本でも120年ほど前、書と木版を土台とした出版が消滅し、著者と職人たちの仕事の価値と価格が揺れ動き、言語、文化、社会に大きな影響を与えました。それまでの文明を否定した「文明開化」を、旧文化の担い手たちはどれだけ苦々しく思ったでしょう。いま私たちは、1世紀以上の時を経てその感慨を共有しているのです。

個人的には「行く川の流れ」を嘆じたくなる齢ですが、メディアの大変動の時代に生きている幸運と不運を感じつつ、この川の流れの行きつく先を観察していたいのです。こんな機会はめったになく、発見やアイデアは尽きることがありません。

創刊時にも述べたように、変化は予想通りです。不確定だったのは、日本のビジネスと社会がこれにどう反応するかということです。それは必ずしも好ましいものではありませんでしたが、最悪ではなかった。EPUB3から取り残されなかったし、ガラパゴスに孤立しているわけではでもありません。インターネットとモバイルは出版ビジネスに開かれています。本気で向き合えば、テクノロジーはいつでも出版の味方です。木版の後には活字出版が生まれて、爆発的に成長しました。人々の知的好奇心を刺激してきたからこそです。

本誌は、創刊以来、テクノロジーとマーケットの間に生まれるビジネスモデルに注目してきました。これまでのところ、ほとんどのイノベーションはアマゾンが主導しています。当分は本誌もアマゾンを中心にフォローしていくことになるでしょう。というのも、アマゾンのビジネスモデルは、インターネットの開放性を独特の方法で利用しているもので、前者は普遍的であり、後者はモデルとして学び、再発明することができます。デジタル出版への本誌のアプローチは、Webとアマゾンという2つの焦点を意識したものです。テーマ的には、プロセス/プロジェクトとしての出版、インターネットと出版の統合、といったあたりになるでしょう。ご期待ください。そして引き続きご愛読をお願いします。 (E-Book2.0 Magazine編集部、09/23/2016)