EPUB戦記(9):市場の要求とタイムリミット

turning point

前回述べたように、コンソーシアムの標準は「市場」の動き出すのを待たず、その1年以上前から(ニーズが把握できた時点で)着手されるものだ。遅すぎれば市場に出てくる製品やサービスに無視され、早すぎれば技術的環境が変わってしまうリスクが増す。EPUB3の活動が集中した2010年は、市場が動き始めており、アマゾンばかりが目立っていた2009年までとは状況が一変していた。E-Bookの標準フォーマットは重要な意味を持つようになった。 … [Read more...]

EPUB戦記(8):標準というゲームのルール

centering

筆者はOMGという国際標準化団体に関わっていたので、そこでの活動の表と裏を見る機会があり、多くを学ぶことが出来た。いちばん感銘を受けたことは、激論やごり押しや根回しといった(どこにでも見られる)風景だけではない、高い知性と公徳心を持つ人々の理性的な議論と、稀にしかお目にかかれない民主主義というものだった。そこでは言葉の壁などは、あまり問題にならない。ちゃんとした技術を持ち、目標を共有している限り、味方はつくれるのである。そうした意味では戦いは「日本対世界」といったものでは絶対にない。 … [Read more...]

EPUB戦記(7):世界標準に縦組という奇跡

CSS

EPUBは、W3Cの3標準(HTML、CSS、SVG)をベースとしているので、それらにない機能は入らない。ないものは間に合うように大急ぎでつくるしかない。それに日本と台湾でしか使われていない機能を世界標準に盛り込ませるには、相当の説得力と腕力、あるいはそれ以上のものも必要だった。奇跡とも言える1年半を見ていく前に、何をクリアする必要があったかを要約しておきたい。 … [Read more...]

EPUB戦記(6):国際標準化の舞台

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EPUB3標準に縦組仕様を盛込むプロジェクトの成功のドキュメントについて、できるだけわかりやすく描くのが筆者のミッションである。中心的な役割を果たした人々の話を順次紹介していきたいが、内容は簡単にまとめられるものではないし、それを理解していただくためには、国際標準化という、あまり世間では知られていない背景について、筆者なりにまとめておく必要を感じている。個人的にも20年近く関わったが、理解が進まないことには理由がないわけではない。 … [Read more...]

EPUB戦記・ノート(5):技術の宿命

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昨日は「EPUB vs. XMDF」について書いたが、このタイトルには違和感を感じる。技術的に比較してもあまり意味がない。対置し競争させようにも、じつはそもそも同じ平面には乗っていないからだ。XMDF(とDotbook)はEPUBとはまったく違った性質(あるいは宿命)を持っている。ベクトルが違うと言ってもいいかもしれない。これは前提とするビジネスモデルが違うためだ。この違いを隠してきたことが、「元年」へのエネルギーを空転させ、無化させた原因だと思う。しかしその最大の被害者は、シャープであったようだ。 … [Read more...]

EPUB戦記・ノート(4):EPUB vs. XMDF

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第1回では「筋書きが気になる」というコメントをいただいたが、これは筆者も同様だ。プロジェクトX風に、挫折を見た「男たち」が立ち上がり、壁を乗り越えて縦書を「世界」に認めさせ、めでたしめでたし、というドキュメント風フィクションの型は趣味ではない。このテーマにはいくつものコンテクストがあり、それによって緊張が生じ、バトルが生まれた。その過程で見えた日本社会の問題(技術的停滞と閉鎖性回帰)と、それを未来へ向けて変えていく力についてこそ書きたいと考えている。ここでは2つのコンテクストについて述べる。 … [Read more...]

EPUB戦記・ノート(3):E3Jにとっての壁とは

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E3Jプロジェクトの成功にはかなり謎が多い。メディアがほとんど取り上げなかったので情報が乏しい。フロックなのか、それとも日本人の国際標準化への関わりに新境地を拓いたものなのかを明らかにすることは、この 企画の最大のミッションだと考えている。自他ともに「特殊」とされてきた縦組を、どうやって国際標準の本体に入れられたのか、そして大企業や業界や国の支援もなしに出来た背後に何があったのかということである。もしかすると、なかったからこそ成功した可能性も含めて。 … [Read more...]

EPUB戦記・ノート(2):ユニコードとEPUB

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日本において、EPUB問題はユニコード問題と深い関係がある。ユニコードはEPUBの前哨戦であり、その結果がE3Jに与えた影響はとても大きかったと思われる。文字は組版の土台をつくる積み石であるというだけでなく、ここでの一種の「社会的体験」が、標準化のステークホルダーたちに現実的な行動をとらせたのではないか。証明は簡単ではないが、関係者に補足していただくことを期待して、ここで問題を提起しておきたい。 … [Read more...]

EPUB戦記・ノート(1):はじめに

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『EPUB戦記』というたいそうな表題の本を書くことになった。筆者は、EPUB3が異文化コミュニケーションの歴史に残るイベントだったと考えているが、EPUB3に縦組を含む日本語組版仕様拡張を盛り込むことに成功した人々の苦闘の跡を記録し、様々なコンテクストの中で、その意味を理解する材料を提供したいという趣旨で取り組んでいる。異例だとは思うが、出版とはコミュニケーションの一部であるとの理念を実践するため、この連載へのフィードバックをいただければ幸い。(鎌田博樹) … [Read more...]