新しい10年(decade)が始まった。久しくなかった温かい「風」が吹いている動きを感じる。「ゼッタイ脱出不可能」な境遇にいたはずの人がハレて中東に現れた。「脱出ショウ」にトリックがあるように、今回の仕掛けも徐々に明らかにされるだろう。ともかく硬直した非対称の世界で、生命の「風」が吹き抜けたことは、膠着状態が溶けて、重く固い「事態」が動き出したことを意味する。 ... [続きを読む]
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BOOKS & the WEB

YouTubeマッシュアップ体験
筆者は近年、中国やインドの音と映像記録から見える「人間の文化・社会」をテーマに、「全体」として「体験」的に観察する遊びにはまっている。「良き書物を読むことは、過去の最も優れた人達と会話をかわすようなものである」と、かのデカルトは『方法序説』で言っている。筆者は、本ならぬ、マルチ×メディア体験で「脳内オルギー状態」を発生させて夏を乗り切ろうというものだ。長年、文字で記述された(静的な分析や印象)をその ... [続きを読む]
テクノロジーと社会

中国はどうやって「現代化」に成功したか?
人類の進化(学習過程と社会的行動)を解明する社会的学習理論は、言語による社会的学習能力の獲得の成果について多くを語っている。しかし、重要なことは、言語能力によって、人間が社会的・進化論的ジレンマを抱えたことのほうだ、と進 […]
UI/UX

ロックの「アリア」はなぜ消えたか?
「音楽は言葉で名づけることが出来ず、知ることが出来ないことを伝える」とレナード・バーンスタインは言っている。音楽は「体験でありコミュニケーション手段」でもあるということだ。とはいえ、音楽について語られることは、演奏はもちろん、楽理や記譜法からコンサートの絶叫に至るまで、古来尽きることはない。それは体験が基本的に「意識 ... [続きを読む]

猫は信じなくても時に人を救う
道具が芸術・表現に影響を与えることはよく知られている。メディアはさらに「コンテンツ」の価値を変える。創作・表現ばかりではない。Webは多くのモノやコトをコンテンツに変えた。サッカーが世界的な巨大ビジネスとなったのも、そしてどこにでもいる猫が近しいコンテンツとなったのもWebのUXのせいだ。この現象は考えてみる価値があると思う。 ... [続きを読む]

UXブログ:落語と「てきすと」
落語の柳家小満ん師匠(75)の 口演用『てきすと』の自費出版は、34巻を過ぎて続けられているが、師匠のインタビューが産経ニュース(01/28/2018)に掲載されていたのを見つけた。音声/文字、2つの言語を往復することの意味を理解する上で、話芸の長老の声は貴重なものだ。言語表現は文字と声が一体のものであることを実感させる。文字+オーディオが自由に使える時代に、その先を期待したい。 ... [続きを読む]

UXブログ:物語とバザール体験 (1)
[ユーザー+エクスペリエンス=UX] 「ストーリー(物語)」が創作の世界から抜け出て、ラジオやTVで放送され、日常的に共有される現象は、いまから1世紀ほど前に始まった。放送ドラマは「マスメディア」の全盛期を築き、商業出版もそれを追って大規模化した。 Web以後に起きたことは、その再現であると同時に再構築でもある。Webの銀河系は「近代」以前への回帰を伴いながら、スケールを拡大させている。違い ... [続きを読む]

UXブログ:体験は主観・気まぐれ…
先週の記事は、直感と印象ばかりの記事にしては(そのせいか?)多くの方にシェアいただいた。UXについては確かな手懸りを得ていないが、直感の共有は何かの「意味」を持つはずで、それが分かれば「理解」につながる、という(これまた)直感を得た。問題はどのような方が筆者の直感のどの部分に、どう関心を持たれたかが分からないこと。筆者は、何となく「体験」がシアトルから始まったと感じた。この港町は何となく足を延ばした ... [続きを読む]

UX、スタバ、アマゾン
最近のビジネス系出版物の惹句では「リアルとデジタル(バーチャル)」という言葉が目立つが、思えばこれは20年ほど前の「ITビジネス」がテーマとした「経営とIT」というのと同じ。それぞれの関係者にとって異質な、あるいは本質や関係がよく分からない「重たそうな言葉」を並べて勿体をつける編集手法だ。 ... [続きを読む]
News media

「読者との直の関係」を選ぶNYT
アップルが先月発表した 「Apple News+」に2つの有力紙(New York Times と Washington Post)が「不参加」を表明した。NYTは「読者との直の関係」を重視、WPは「意味をなさない」とした。それぞれ独自のデジタル戦略と取組んできた両社にとって「メタデータ」が使えない情報発信は無意味だと見られている。 ... [続きを読む]

メディアの危機ー(4):危機の本質
デジタル情報空間は、メディアの性格を大きく変えた。この環境では、メディアとコンテンツ/メッセージは固定的な関係から解き放たれ、ビジネス的に有意な結合をもとめて流動化し始める。「あるメディアのコンテンツはつねに別のメディアである」という、難解とされてきたマクルーハンのテーゼが、生きた意味を持ち始め、メディアの入れ子構造が、ビジネスの源泉となる。【連載第4回/鎌田博樹】 ... [続きを読む]
本と出版ビジネス
「読者との直の関係」を選ぶNYT
アップルが先月発表した 「Apple News+」に2つの有力紙(New York Times と Washington Post)が「不参加」を表明した。NYTは「読者との直の関係」を重視、WPは「意味をなさない」とし […]
出版最後のアナログ問題 (1):制作
アマゾンCreatespaceは、Kindleエコシステムにおいて戦略的に重要な部分を受け持っていた。それは、デジタル中心のプロセスと市場においても、印刷本の提供が持続可能であることを保証するものだ。読者のニーズをよく理 […]
Web時代の出版と社会
本というものは、著者/読者が「自我」を映す鏡なのではないかと思える。とくに著者はそうだ。読者は変化する「世界」を知るために本を読むが、著者は読者を通して自分を知ることになるからだ。著者にとって読者は不可欠な存在だ。という […]
Forum“Version 2″へ向けて (2)「平成」に何が起きたか?
1970年代、オフィスにコンピュータが登場した。文字と文字組は数値化され、1980年代にはパソコンやワープロが「活字文書」を身近にした。1990年代には、通信もデジタル化され、メディアに浸透していった。あらゆる情報がデジ […]
キーワード解説

キーワード:バーチャル
「バーチャル」は「仮想」と日本語で言われているが、じつは専門家が予め警告するように、バーチャルは「仮想」の意味はない。「実効」とでもすべきものだ。その理由は、仮想という言葉を使うかぎり、転換期にこそ問われる「出版の本義」を見失わせるからだ。(ITでもなじみ深い言葉だが)バーチャルは「リアルとして定義され、リアルに機能する」ものであり、世界を実現する言葉以外のものではない。 ... [続きを読む]
江戸の出版文化
橋口和本論を読む:(2)「本屋」から出版へ
ものごとの初めと終わりは、その本質を知るうえで重要だ。「和本」の世界は、著者と読者と本を様々な形でつなぐ「本」屋で成立っていた。社会の言語活動の要としての「本」が必要とする専門性と一貫性、持続性は、本屋の開放性によって保 […]
橋口・和本論を読む:(1)本・出版・読者という「関係」
「鶏と卵とどちらが先か」ではないが、「本屋と本とはどちらが先か」という話はどうだろう。本とは何か、の答に直結する疑問に、筆者は橋口侯之介さんの『江戸の古本屋: 近世書肆のしごと』がどう答えてくれるかに関心があった。近世日 […]

プレ・グーテンベルクの復興(1):はじめに
「グーテンベルク以前の書物のための仮想読書環境の構築」という筆者のアイデアが、今年のフランクフルト・ブックフェアの Digital Publishing Creative Idea Contestで表彰された(→リリース […]

和本論からE-Bookへ (2):共感装置としての書物を蘇らせる
これまで世界の古典籍の電子化は、画像データ化を意味していた。これは必要なステップだが、それで書物が当時実現してきた読書体験が、今日の人々に共有されるわけではない。それらを活字に翻刻し、注釈を入れ、あるいは現代語訳したもの […]

和本論からE-Bookへ (1):書物としての絵巻
橋口和本論(と呼ばせていただく)から受けた重要なヒントは多く、簡単には整理できない。こういうときは整理を後回しにして、記憶が薄れないうちにインスピレーションをそのまま書きとめ、浮かんでくるアイデアをランダムに書き綴ってい […]
電子出版史談:小林龍生
コンテンツとテクノロジー:(6)『日本語組版処理の要件』と小林 敏さん、小野澤 賢三さん(2)
デジタルはアナログ(実世界)を経済的に模倣し、再現するものだ。実世界には問題を理解する達人とそれに準じた職人がおり、解決を与える。他方でデジタルは、問題が言語(数学的形式)として与えられさえすれば、忠実に実行する。場に応 […]

コンテンツとテクノロジーの対話:(5)『日本語組版処理の要件』と小林 敏さん、小野澤 賢三さん(1)
要求が定義され、機能の仕様が合意され、標準が出来る。その後に実装製品が出てくるのだが、ソフトウェア標準の開発者がまず覚悟しなければならないのは、標準化に対価は得られず、よい標準であれるほど、その機能はデフォルトとなり、早 […]

コンテンツとテクノロジーの対話:(4) 田川建三の『書物としての新約聖書』その3
書物・出版の成立史とともにあった聖書の変遷は、本の本質についての様々な側面を余すところなく見せてくれる。それは本の脱構築と脱神秘化という今日的課題への回答を考えるわれわれにとって、他では得難いものだ。田川聖書論についての […]
DATABASE

ビッグデータとクラウド:アマゾンCTOに聞く
Digital Europeのロベルト・ジカーリ編集長は、さきごろアマゾンのCTO兼副社長、ヴェルナー・フォーゲルス博士 (Werner Vogels, Ph.D.)とインタビューを行い、オブジェクトデータベース技術専門ブログ、ODBMS.orgに掲載した(11/2)。IT関係者のための記事だが、アマゾンの技術がどのような性質のもので、どこへ向かおうとしているかを語っている。これは非技術者にとっても、デジタルメディア・ビジネスとそれを支えるテクノロジーを考える上でも重要なもので、あえて掲載することにした。解説が必要だと思うのでこれは稿を改める。(鎌田) ... [続きを読む]