09年Q4、AT&Tの無線事業は記録的な成長を記録した。契約者が270万人も増加、収入も9.2%増加したのだが、主な要因はE-ReaderとiPhoneだった。これではっきりした。E-Bookは 3Gサービス事業の成功の鍵を握るほどのものだ。E-Readerやネットブックのような非電話無線端末の増加により「普及率」の壁を超えることができる。そしてサービスプラットフォームと競うのではなく、競わせることで通信会社の売上は増加する。
AT&Tの発表した数字は全体として予想通りだったが、目を惹いたのはワイヤレス事業の躍進だった。2009年全体では、AT&Tの純増が730万なのに対し、ベライゾンは460万にとどまった。しかも後者の増加は、買収によるもので営業増ではない。契約数で首位をいくベライゾン (8750万)との差を一気に縮め8510万と射程圏内に捉えた。AT&Tは「スマートフォンのほか、新興のE-Reader、ネットブック、ナビゲーション機器が急成長したことによるもの」としている。スマートフォンを除いた部分は約100万に達した。これらのユーザーは、AT&Tが直接獲得したものではなく、メーカーが販売してくれたものだ。4Qの無線データ通信の売上は26.6%増加し、39億ドルだった。
ランドール・スティーブンソンCEOは、モバイルブロードバンドが推進力になっていると語り、今年は3Gの高速化を進めるとともに、2011年に4Gの導入を開始することを明らかにした。これは、契約者数210万に達したTVサービス U-verse TV の拡大も想定したものである。アップルのiPadはもちろん高速サービスの需要を押し上げるだろう。
さて日本である。ITmediaにドコモの山田社長の最近のインタビューが載っており、「電子書籍も含めて、新たな風に対してチャレンジ項目を立てていきたい」という発言が紹介されている。iPadも電子書籍も「チャレンジ項目」に入っているらしい。チャレンジとでもしないと誰も“リスク”を取ろうとしない雰囲気が感じとれる。しかし、現在の携帯の延長上には未来はない。ガラパゴス的プラットフォームにも未来はない。理由は1ダースはある。モバイルWebに対応したビジネスモデルを構築する上で、E-Readerやタブレットは戦略的端末となる。現実的課題として取り組んでいただきたい。 (01/30/2010)
参考記事
AT&T earnings: E-readers, iPhone, netbooks propel wireless subscriber gains, by Larry Dignan, ZDNet, 1/28/2010