【2010年10月5日、フランクフルト】媒体に依存しない純粋な話法とメディア横断的コンテンツの必要-これが今年のFBFの二大テーマとなった。「十分な説得力を持つストーリーこそブックフェアの原動力です。新技術の登場は、とりわけ次のことを確証しています。コンテンツへの需要はかつてないほど高まっています。」ユルゲン・ボース総裁(写真)は第62回フランクフルト・ブックフェアの開会を前にこう述べた。
テクノロジーとクリエイティブ産業をつなぐ―Frankfurt SPARKSイニシアティブ
今日の出版産業の動向を客観的に評価するものとして、FBFは国際的なメディア産業に対してFrankfurt SPARKSというデジタル化に関するイニシアティブを提起した。いわゆる拡張型E-Book-つまりデジタル形式のマルチメディア書籍-が米国や英国、ドイツで登場した。例えば、ケン・フォレットなどの有名作家は、新作( “The Pillars of the Earth”)の印刷版だけでなく、マルチメディア版も発表しようとしている。
今年のブックフェアには、コルネリア・フンケ、ジョナサン・フランツェン、ケン・フォレット、ブレット・イーストン・エリス、フレデリック・バイクベーダー、ジョナサン・ストラウド、カタリーナ・ハッカー、ギュンター・グラス、アントニオ・スカルメータ、リチャード・デイヴィッド・プレクトなどの作家が顔を見せ、ストーリーがメディアプラットフォームの境界を行き来する方法に関する議論などに参加する予定。政治思想家のイングリッド・ベタンクール、キューバのブロガー、ジョアニ・サンチェス、アルゼンチンのAbuelas de la Plaza de Mayoの創立者、エステラ・バルネス・デ・カルロットは、自身の信じられないような体験や見方を世界中から集まった聴衆に語る。今年の名誉ゲスト国であるアルゼンチンを祝福するために、FBFではアルゼンチンの文化と文学を特集する300ものイベントを企画。オスヴァルド・バジェル、ラウラ・アルコーバ、フェリシュ・ブルゾーネ、グリセルダ・ガンバーロ、マルティン・コーアンを含む70名のアルゼンチン作家を迎えることにしている。
ゲーム、音楽、映画と書籍産業を含む文化産業の間で、いま新しい接点が生まれつつあり、テクノロジー産業はコンテンツを求めている。つまり、「フランクフルトがテクノロジーとコンテンツそしてその背後にいる人々を、結びつけるのです」とユルゲン・ボースは述べる。メディア産業における最大の年次イベントは10月6日から5日間、世界111ヵ国の7,500もの出展者を集めて開催される。
Frankfurt SPARKS:フランクフルト・ブックフェアのデジタル・イニシアティブ
FBFは今年、デジタル関係の活動をFrankfurt SPARKSというイニシアティブに集約している。ドイツの書籍市場において、印刷本はなお96億ユーロの市場の99%を占める稼ぎ手ではあるが、成長機会はデジタル商品にある。「出版社や媒体企業はこの機械の重要性を理解しており、将来に備えつつある。」とボース総裁は述べる。出展社のカタログを見れば、1,900の展示でデジタル商品を展示することになっており、3,000近くのイベント、450もの講演、プレゼンテーション、討論がデジタル関連のテーマを扱っている。Frankfurt SPARKSには、2種類のフォーマットがあり、クリエイティブ産業を対象にした2日間のメディア・カンファレンスFrankfurt StoryDrive と、テクノロジーとコンテンツ・プロバイダーをつなぐFrankfurt Hot Spotから構成される。印刷されようがマルチメディアの形をとろうが、コンテンツが最も重要なことは変わりがない。電子化はコンテンツの知的所有権をめぐるバリューチェーンの価値を高めるが、同時に権利をめうる交渉はますます複雑になるだろう。ボース総裁は「著作権の売込みやコンテンツ製作とマーケティングについて、FBFほど高度なノウハウを提供するイベントはありません。」と意義を強調している。
中核市場の安定、権利専門家の増加
新しいビジネスモデルの中心となるのは、ますます複雑さを増す諸権利の売買-つまり一般的な権利とE-Book、拡張E-Bookにともなう権利だ。これは6.2ホールを会場として著作権専門家が集まる Literary Agents & Scouts Centre (LitAg)のセッションへの関心の高さにも表れており、522名のエージェントが登録している(3.8%増)。「フィクションとノンフィクション、教育、児童書、それにノンブックのカテゴリーでも出展者は目立って増えています。8.0ホールの英語書籍の区画は満杯になりました。」とブース総裁。集合ブースの中小の出展者も、今年は増加している。
最新デジタル技術/E-Readerの展示
FBFは革新的なプロダクトのためにステージを用意している。ドイツの書店チェーンのターリア(Thalia)は、E-ReaderのOyoの発表を予定。またアムステルダム大学は、人文・社会科学における論文を集めた欧州で最初のオープンアクセス・ライブラリとなるOAPEN Libraryをスタートさせる。高等教育用E-ReaderのenTourage eDGeは、Dualbookを初出展。市場調査機関Media Controlは、ceebo (central e-book)プラットフォームを展示し、Droemer Knaurは、著作者の出版を支援する独自のオンラインプラットフォーム、neobooksをデモする。印刷会社のHimmerは、音響情報を読み取ってテキストにエンコードし再生可能とするmp3スキャナの“Ting” を展示する。 Annabella Weisl (Google Books) は、Googleの大規模オンライン書店プロジェクト、Google Editionsを発表するが、それは消費者だけでなく、在来型の書店も利用できるものだ(6日10:00-11:00)。専門家によるパネルでは、世界の出版社のデジタル戦略に関する深い洞察を聞くことができる(6日13:00-14:00)。また8.0ホールのSPARKS Stageでは、トム・ターヴェイ(Google)、ブライアン・マレー(HarperCollins)、エヴァン・シュニットマン(Bloomsbury)、アンドリュー・サヴィカス(O’Reilly Media)の各氏が議論を交わす。Devices Hot Spot (8.0ホール)は、25種のE-Readerとタブレット型PCが、アジア、米国、欧州から出品・展示される。
業界の将来動向を先取りするトレンド・カンファレンス
デジタル時代を迎え、個人レベルでの交流が活発化している。今年のFBFでは、一連のハイレベルのカンファレンスでこの問題を取上げる。2回目となるTOC Frankfurtが、FBFの前日にマリオット・ホテルで開催され、ブロガーでジャーナリストのジェフ・ジャーヴィス(“What Would Google Do?”の著者)が基調講演を行う。
2日間にわたり開催されるStoryDriveカンファレンスは、書籍産業に隣接するゲーム、音楽、映画・TVなどの文化産業を結びつけることを意図している。30のセッションに50名あまりの講演者が登場し、デジタル時代のストーリーテリング(話法)という問題を論じる(6-7日、Film & Media Forum)
「新しい権利を売る新しい方法」という標語を掲げたInternational Rights Directors Meeting RDMは、E-Bookの著作権を含めた契約上のすべての側面を取上げる(10月5日、4.0ホール、14:00-17:00、Room Europa)。30ヵ国から300名あまりの著作権管理者と代理人が参加することになっている。詳細プログラムはこちら。(本記事は、プレスリリースの非公式訳をお届するもので、内容はフランクフルト・ブックフェアに帰属します。)
報道関係連絡先:
Katja Bohne, Press Officer, phone: +49 (0) 69 2102-138, press@book-fair.com
Nina Klein, Director Press Office, phone: +49 (0) 69 2102-165, klein@book-fair.com
フランクフルト・ブックフェアについて
100ヵ国以上から約7,000の出展者が参加して開催される、本とメディアに関する世界最大のトレードショウ。ドイツ出版業界が世界25以上のブックフェアに出展する窓口としても機能しており、南アフリカのCape Town Book FairやAbu Dhabi International Book Fairと提携関係にある。そのWebサイトは、出版関係では最も訪問者が多く、書籍・メディア産業の意思決定者およそ31,000人のコンタクトリストを管理する。FBFはドイツ出版業・書籍商協会(German Publishers & Booksellers Association)に属している。
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