ADAMのリリースを間近にしたNotion Inkが、ユニークな企業ロゴ・デザインのコンテストを行っている(ちなみに現在はスケッチ風の仮ロゴを表示)。ユーザーとともにゼロから歩んでいきたいというコンセプトの実践で、これまでにもブログを通じて製品の最終仕様決定へのプログラムをセスを公開してきた。今回は4,500点以上の応募があり、いま会長のブログで“ファン投票”が進行中。
Notion Inkのユニークなところは、Wisdom of Crowds(衆智)を集めながらプロジェクトを進めていくところだ。衆智を集めるというのは簡単ではない。Web 2.0で知られるようになったが、日本では「アイデアを安く集める方法」と紹介されることが多い。だがこんなさもしい根性を持った企業に、誰が本気で協力しようと思うだろう。何よりまず、参加への動機づけができなければ、人は協力してくれない。
衆智を集めるのはつねに難しい
参加/協力を期待するには、自分が何をやろうとしており、それが世の中にどんな意味を持つか、そして事業に参加することがどんなに楽しいかを伝えられなければいけない。呼びかける相手はアマチュアであってもよいが、できればひとかどの才能を持ったプロフェッショナルであってほしい。自分で確信を持てなければ、自信のある相手にメッセージの作為や軽侮を感知される可能性が強い。賞金目当てや二流以下の人間の提案がいくら集まっても、時間と労力を空費するだけだ。そもそも、デザインに関するユニークな発想は、孤独や煩悶の中からしか生まれないのだから、「衆智」とは緊張関係にある(必ずしも対立はしない)。
Notion Inkの場合、若いシュラヴァンCEOが自らブログでプロジェクトの情報公開を行い、関心を持つ人に率直に情報を公開し、多くのコメントを受取ってきた。会社としての重要発表も、プロジェクトが直面している技術的・経済的課題も、自分の考え方も、すべてブログで語られている。こうしたブログの使い方は、米国のスタートアップ企業によくある形だ。つまりフォーマルな広報を置く余裕がない場合、あるいは広報とのコミュニケーションや決裁の時間を惜しい場合には、CEO自身がやるのが一番いいということだ。製品の最終仕様決定途上の、微妙な段階での情報開示は、大企業が広告代理店を通じて行うティーザー(ちら見せ)た、アップルがよくやる、ジャーナリストを通じてのリークが知られているが、シュラヴァン氏がブログを通じて伝える内容には、そうしたところはまるで感じられない。
4,500点の応募が集まったわけ
つまり、Notion Inkのインタフェースは彼一人で、メッセージは彼から発している。内容には知性と誠実さが感じられる。工業デザインのセンスもある。これはまだ20代も半ばという若さだけではない魅力だ。衆智を集めるための前提は、こうしてつくられてきたのだろう。プロジェクトは春以降、出資者との開発方針をめぐるトラブルから3ヵ月あまり、事実上の中断を余儀なくされ、ブログも休止していた。“復帰”してからの発信は頻繁になり、内容も外形デザイン、画面、音響、内蔵カメラ、UI、バッテリー、会社のロゴなど、具体的で面白い。読者はブログを通じて開発スタッフの議論に参加しているような気分になってくる。製品開発がこんなにエキサイティングなものか、と感動すら覚える。少なくとも数千人のファンがつねに彼の記事をフォローし、その中には世界各地の、多くのプロフェッショナルが含まれる。
その彼がいまやっているのは、企業ロゴデザインの募集だ。なんと4,500点以上の応募があり、うち43件を公開した。作品はスライドショウで表示し、第2次審査(10点)までに「できれば微修正を」などのコメントを付けている(ブログ参照)のもいい。そして残った10点に対していま投票を呼び掛けている(締切はインド時間の10月30日午前11時)。興味のある方はぜひ。(鎌田、10/29/2010)
[…] This post was mentioned on Twitter by Digi-KEN, Hiroki Kamata. Hiroki Kamata said: 製品リリースに合わせ、Notion Inkがユニークな企業ロゴ・デザインコンテスト。なんと4,500点も集まってキャンペーン効果も […]