米国スターバックスが今週、Starbucks Digital Networkのサービスを開始し、音楽、映画、ニュース、E-Bookを、約6800店舗の無線LAN経由で提供する。Yahooと提携してポータルサイトを運営するもので、コンテンツプロバイダーとしては、Bookish Reading Club、Foursquare、GOOD, LinkedIn、New Word City、The Weather Channelなどが参加している。WSJ.comなど提携する有料サイトのを無料で閲覧できるようにした。
コーヒーと本との強い結びつきは、歴史的に実証されている。B&NやBordersなどの書店では喫茶コーナーがあり、コーヒーを飲みながら棚の前に坐って本を読む風景もめずらしくはない。かつて日本の喫茶店でも日常的な風景としてあった。B&Nは、Nookの持参者にコーヒーや無料コンテンツをサービスしたりしている。カフェ市場が完全に成熟したいま、集客効果とビジネスモデル開拓の両面で、デジタルコンテンツ・サービスの可能性が試されているわけだ。一定の集客効果があることは間違いないが、それが飲食での売上増につながるかどうかは定かでない。しかし、出版社などはキャンペーンやプロモーションの場として利用できるので、SDNはカフェがメディアとなって広告収入や販売手数料収入を得るモデルを描いたものと思われる。
しかし、Wi-Fiネットワーク・プロバイダーにとっては、すでに提携しているスタバ(など)が無料Wi-Fiのスポットとして定着することは、一定の影響を免れないだろう。また、カリフォルニアなどを中心に、店によっては、“沈黙の客”が多くなることで、F2Fコミュニケーションと社交の場としての店の雰囲気が壊れることを嫌って、Wi-Fi/モバイルの使用を制限したり、禁止したりする例も目立ってきた。たしかに度が過ぎればカフェが「ネットカフェ」化する可能性もあり、そうなればブランドイメージに傷がつくリスクもある。カフェは文化産業でもあるので、慎重に実験してみる必要があるだろう。 (鎌田、10/21/2010)
参考記事
Starbucks Digital Network: Free, Exclusive In-Store Content Courtesy of Yahoo, iTunes & More, By Nicholas Deleon, CrunchGear, 10/20/2010
How Starbucks Plans to Capitalize on Free Wi-Fi, Jennifer Van Grove, Mashable, 08/12/2010
Starbucks Defines Vision for Enhancing Customer Experience Through In-Store Digital Network, Starbucks Newsroom, 08/12/2010
Looking Beyond Coffee, Starbucks Seeks a New Digital Future, By Kevin Tofel, GigaOM, 06/14/2010
Starbucks Announces Free Wi-Fi, Proprietary Content Network, By Eliot Van Buskirk, Wired, 06/14/2010