ここにご紹介するのは、サンフランシスコの北、サンラファエル市の公立図書館の副館長で、コンサルタントとしても活躍しているセーラ・ホートン-ジャン氏が書いた、「E-Book ユーザーの権利章典」という文章だ。大手出版社のハーパーコリンズ社と図書館との対立の背景には、E-Book において本とはなじみの薄い「ライセンス」販売という形態がとられていることがある。出版社は無制限に貸出されて売れなくなる悪夢を怖れ、図書館はE-Book を扱えなくなることで公共的使命を果たせなくなることを怖れる。彼女はここでE-Book についても印刷本と同様の扱いを認めるべきだと主張している。この文章は米国で引用されることが多いので参考のために訳出・掲載したものである。彼女の主張は、ブログ等で読むことが出来るし、この権利章典の解説もPodCast で聞くことが出来る。
E-Bookユーザーの権利章典 (Ebook Bill of Rights)
著:セーラ・ホートン-ジャン(2011年2月28日)
すべてのE-Bookユーザーは以下の権利を有する。
- 権利者による制限よりもアクセスを優先する指針の下にE-Bookを使用する権利
- ユーザーが選択するハードウェアおよびソフトウェアを含む任意のプラットフォームからE-Bookにアクセスする権利
- フェアユースと著作権の範囲内でE-Bookへの注記、章句の引用、印刷を行い、コンテンツを共有する権利
- ファーストセール・ドクトリン(頒布権の消尽)をデジタルコンテンツに拡大する権利。すなわちE-Bookのオーナーに保有、所蔵、共有、再販売の権利を保証すること
私は情報と思想(idea)の自由市場を信奉しているものです。
私は著作者、出版者は、彼らの作品が広汎なメディアですぐに入手可能になる時に輝くと考えています。私はまた、読者がコンテンツにアクセスし、注を付け、他の読者と共有することで新しい読者と市場の発展に寄与する自由を最大限に与えられた時に、著作者と出版者は繁栄するものであると考えています。私はE-Bookが識字、教育、情報へのアクセスというより大きな文化的基盤となると考えるが故に、購入者はファーストセール・ドクトリンの権利を享受すべきであると考えます。DRM(デジタル著作権権利)は、関税のように、思想、文学、情報の自由な交換を妨げるメカニズムとして作用します。同様に、現在のライセンス契約は、読者が読む個人の素材に関しても最終的な管理権限を持てないことになっていますが、E-Bookに関するこうした現状は受け容れられるものではありません。
私は一読者です。私は犯罪予備軍ではなく消費者として尊重される資格があります。私は顧客であり、私が購入しもしくは借りたE-Bookについては自由に処分する資格があります。
私はE-Bookに含まれる文学や情報へのアクセスが将来どうなるかについて懸念を持っています。私は読者、著者、出版者、書店、図書館員、ソフトウェア開発者、デバイスメーカーに対し、上述したE-Bookユーザーの権利を支持することをお願いするものです。
こうした権利は皆のものです。今度はあなたが立場を表明する番。本文中のメッセージ、全文、それにご自身の意見を添えたり、混ぜたりしたものをどんどん広げて下さい。ブログ、Twitter(#ebookrights)、Facebook、メールに書き、電柱に貼って下さい。
注
文中「ファーストセール・ドクトリン」という聞きなれない言葉が出てくるが、これが適用されれば権利者の許諾を得なくとも、売却や処分をすることを認められる。古本屋で本を売ったり、図書館が購入した本を貸し出すことができるのも、米国では著作権法のこの条項による。
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